ここ数年東北の子どもたちの夢を叶えるチャリティコンサートに行き、偶然にも隣の席の方と親しくなった。その友人がオペラ歌手でチャリティにも出演していた縁で、彼が主役を演るベルディの運命の力を一緒に見ることになった。彼女は震災で苦難を味わっていて、わざわざ郡山から新幹線でやって来た。

 ベルディはイタリア統一を歌で国民を励まし、統一後は国会議員を務め、新国家の音楽振興に貢献した偉大な作曲家で、イタリアに音楽家の老人ホームも建てている稀有な作曲家だ。

 ベルディのオペラは基本、運命に翻弄される人間の弱さを描くところはギリシャ悲劇と一致しているが、陰惨な物語を緊迫感あふれる音楽でたたみかけ、メリハリをつけて5分に一度は山場を作り、飽きっぽい聴衆のために長くても2時間半以内に全編を収めるところにある。

 この作品は家名を重んじるところから悲劇が始まり、その恐ろしいまでの執着により家族が死に至るおぞましい物語だ。

ベルディは19世紀後半のヨーロッパのあらゆる不合理や不幸をオペラという器に収めようとし、観客も歌唱に陶酔しながらこの世の不合理を引き受ける勇気をもらっていたようだ。

 とにかく初めから終わりまで、メロディの美しさに酔いしれた。ソロの歌ももちろんドラマチックな音の洪水で改めてベルディので素晴らしさを堪能した。