約50万人分、366億円。

月々の掛け金を納めておきながら、支払われなかった退職金総額です。

 昭和34年に中小企業対策の一環として中小企業退職金共済制度が制定されました。制度は国からの助成金と、会社が従業員1人当たりで月5千円から3万円支払った掛け金とを厚生労働省の所管する独立行政法人「勤労者退職金共済機構」が運用し、従業員に退職金を支払っていくものです。

 掛金納付月数が1年未満の場合、退職金は支払われませんが、1年以上であれば退職金が支払われることになっているものが、今回、長妻昭代議士の指摘で明らかになったのは、約50万人分、366億円の退職金が未払いになっていたという実態です。退職金支給状況を調べると、平成16年度で20億、17年度も20億、18年度が19億円と、毎年毎年未払い退職金が発生していることがわかります。この件について今朝行なわれた党の厚生労働部門会議で、厚労省の担当者から説明を聞きました。そこでわかったことは、この独立行政法人は厚労省、国交省、林野庁の天下り団体であったこと。平成14年にも国会で未払い問題を指摘されておきながら、翌年以降も未払いが発生し問題解決がなされていなかったこと。未払いが発生していることに対して労働基準局の担当者が言われました。

「支払っている退職金総額の中で未払い分は0.5%の小額です」
「企業側と従業員のトラブルによるものも少なくないのでは」
「短期間雇用の方が多いのでご存知ないのでは」

 まるで機構、厚労省の責任は全くなく、契約した中小企業の問題だと言わんばかりなのです。「0.5%」とはいえ未払い累計額は366億円もあるのです。このお金は掛金を払ってきた企業の従業員にお渡しするものです。このことに対し、担当者は言いました。

「一件あたり、退職金支給額は140万ですので」

 たかが140万と聞こえました。

 霞ヶ関の方々と話していて気付くことは、80兆もの国家予算を扱っているからなのか、数十万、数百万単位のお金に対して鈍感な対応をされるのです。この一件あたりの退職金140万円は、厚労省の扱う20兆円もの予算額に比べれば小さいかもしれませんが、仕事を辞められた方にとっては大切な退職金です。本来支払われる140万円がいただけないことが、人1人の退職後の生活に大きな影響を与えるかもしれない、との想像力さえあれば『未払い』問題への機敏な対応につながるのでしょうが、残念ながら、官僚の方々からはこうした想像力が伝わってきません。

 さらに、担当者は、問題解決のために新聞広告を出したことを説明した上で言いました。

「今回、(長妻代議士の指摘で報道されたことで)新聞報道でも照会電話番号が記事になるなどしました。これに、のっかって…」

 つまり、報道されたことに便乗して未払いがあることを周知できればいいとの考え方を笑いながら説明するのです。

 愕然としました。
 こんな感覚では国民の痛みはわからないだろうな、とも。

 中小企業退職金共済制度に加入していながら未払いになっている件数は昭和34年からの累計で49万件あります。お心当たりのある方は下記の電話番号まで問い合わせていただきたいと思います。

 0120-938-312(受付時間月~金曜日9:00-20:00 ※祝日は除く)