誰のものかわからない宙に浮いた年金記録が5,000万件あり、私たちの国会での指摘があって以降大きな問題になりました。安倍総理、柳沢厚労大臣が一貫して言い続けてきたのは、年金は「申請主義」であり、受給者が自ら名乗りを上げ自身が年金保険料を納めていたとする証拠を出してもらってから社会保険庁が調べるので、政府が責任を持って5,000万件を調査することは「ない」ということでした。

 私たちは全くの逆の立場です。国が保障する年金制度において、納めたはずの記録がなくなっているなんてことはあってはならないのです。だからこそ社会保険庁、国の責任において全件調査をして、迷子になっている記録を照合し、貰い損ねているかた、貰えるのに年金を受け取れないで困っていた方々に誠意を持ってお渡しすべきであるとして、「消えた年金記録被害者救済法案」を提出していますが、政府は全く検討にも値しないとの立場だったはずです。

 ところが、週末に支持率が急落した途端に、安倍総理の指示で自民.公明両党から「年金時効撤廃特例法案」なるものが提出されました。政府のこれまでの説明では、社会保険庁のミスで年金を受け取る額が少ないとしても、国が保障するのは過去5年間の不足分だけでそれ以前の額は時効が成立し、国は不足分を払わなくてもいいことになっています。つまり、保険料を納めていたにもかかわらず、しかも、社会保険庁のミスで給付を受け取れないことになっていても、受給者はもらえないことが認められているのです。私たちは、今回の行方不明になっている年金記録においては、時効の要件を満たしているとは言えず、法の運用を厳格に行うことで社会保険庁に瑕疵があれば貰い損ねている年金を全て弁済してもらえることが可能と主張しています。法改正なくして救済が可能であるものをあえて与党が議員立法で法案を提出することは、支持率を意識した、国民向けの姿勢であると言わざるを得ません。しかも、一度委員会で成立した政府提出の年金機構法案では不十分だとして、その足らざる部分を議員立法で是正をしようとすることは、自ら政府提出法案に問題があったと認めています。さらに言えば、今回の与党議員立法の内容では、一体いつまでに、どうやって、何を持って記録が自分のものだと、誰が認めるのかが不明です。これでは実際に悩んでおられる方々の救済策にはつながりません。

 にもかかわらず「救済法案」だと与党が胸を張る法案は、昨夕に衆議院に提出をされました。そして、今日の厚生労働委員会においてたった4時間の審議を行っただけで強行採決をすると言われています。多くの方々が関心をもたれている年金問題だけに政府案、民主党案をきちんと見比べ、審議を尽くして、社会保険庁のミスで被害者となった方のためにも最大限救済措置が可能な法案を成立させるべきと考えます。

 法案は政府の支持率を上げるためのものでも、政局の道具でもないことを強く指摘します。

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