昨日、安倍総理が「ホワイトカラーエグゼンプション」制度の導入について、関連法案の通常国会提出は困難との見解を表明しました。
 ホワイトカラーエグゼンプション制度は、1995年に当時の経団連が「将来的な雇用関係のあり方」として、労働時間に対して賃金を支給するのではなく、仕事の成果に対して賃金を支払っていくという提案を行い、厚労省が素案を作ってきたものです。
 働く人が、会社に決められた定時出勤定時退社ではなく、自分の好きな時間を選んで働ける制度であり、仕事と家庭での時間を個々人が調整することができるので「少子化対策になる」と、安倍総理は言われてきましたが、政府の考える制度では労働基準法を改正し、ある年収以上の労働者には残業や休日出勤の割り増し賃金を払う対象から外すというもので、この法改正が行われれば企業は、対象労働者に平日の残業や休日出勤で25%以上、深夜業の場合は50%増の割増賃金を支払う必要がなくなります。企業側としてはおよそ10兆円もの経費削減につながり、国際競争力に対応していけると言われていますが、働く人にとっては、成果を出さなければ給料に反映されないために逆に労働時間が増えかねない恐れがあること、どんなに残業をしてもその労働時間に見合った報酬が払われないうえに、長時間の過剰労働で健康被害を招く恐れがあるにもかかわらず、経済界の「過労死は自己責任」との信じがたい暴言までもが報道されていますが、私たちはこうした「残業代ゼロ制度」導入には反対です。確かに、少子化対策として「働き方」のあり方を見直す必要は否定しませんが、今、必要なのは出産・育児を終え再就職したいという女性の声に応える職場を増やすこと。出産しても辞めなくていい雇用環境を整えること。男性でも女性でも子育てのために必要とされる時間を確保してもらえること。正社員でも非正社員でも同一労働同一賃金が保障されることなど、政府のいうホワイトカラーエグゼンプション制度導入の前に行わなければいけない施策が山積をしています。まず行うべきことを行わないで残業代ゼロ制度の導入が「少子化対策」になると考えている総理の考え方には疑問しか抱きません。さらに言えば、今回の法案提出断念となった背景は、統一地方選挙や参議院選挙で批判を受けたら闘えなくなるという「選挙目的」があるかのようにも見えます。
 安倍総理は所信表明演説で消費税について「逃げず逃げ込まず」と言われましたが、消費税の値上げについては「秋以降に議論する」としています。夏の選挙の後に消費税引き上げ審議をするということ事態が「逃げている」と思えますが、労働のあり方も先送りしただけで、選挙の後に導入しようとするのであれば、それは背信ではないでしょうか。
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