予測から予知へ
1960年代に国が本格的に取り組もうとした地震予知研究は、40年以上経過した今日において未だはかばかしくはなく、地震事後確認の状態が続いています。
私自身は地震学が専門ではないのですが、その周辺の研究にたずさわっていたために、第三者的ではありますが大変に関心を持ちました。
米国や中国なども、同じ時期に研究を始めましたが、相手は破壊現象なので、方向性が定まらず、五里霧中の状態です。
どうなるかが分からないという点では、人の死も同様で、死=破壊 と考えると、地震は人の死と同様に予知できなくても不思議はないなどと考えてしまいます。
とはいえ、このことで世界中が努力しているのは本当で、その涙ぐましい努力の中に、悲劇、喜劇が散見されます。
1975年2月に、中国遼東半島の北部で発生したマグニチュード7.3の海城地震は、世界で唯一の予知された地震でありました。
この地方の家庭では、政府の指示により、家族ぐるみで地震予知に協力していました。
動物の異常行動や地下水の状態の異常が地殻の異常を反映しているとして、全家庭にその観測を命じ、毎日、政府に報告させました。
多くの家に地震計も設置されました。
そして、報告の異常さの程度を判断して、政府は地震発生を宣言し、住民を避難させました。
これがズバリ的中したのです。
この時には、住民は、我が家のねずみがどの穴から出入りするかを熟知していたそうです。
しかし、この方法はすべての地震に適用できるものではありませんでした。
翌年 近くの唐山市で起こったマグニチュード7.8の唐山地震では、全く予知ができず、24万人の死者が出ました。
日本では地震はナマズが起こすという言い伝えがあります。
ナマズは地震に敏感かもしれないということで、東京都の水産研究所で実際に地震の前後でのナマズの挙動を調べるという研究を10年間ほど行いました。
地震の際に地中に電流が走るという説もあるので、ナマズに人工振動や、人工電流を与えて、その挙動の研究をしました。
しかし、敵もさるものです。
ナマズも生き物ですから、物事に慣れるという習性があります。
初めは敏感に反応していたものが、その内に相手にしなくなりました。
何か「フン」といった表情でしょうか、人を馬鹿にしたような態度を取り始めたのです。
そうです。生き物は測定機械にはなれないのです。
このような現象(宏観異常現象)には様々なものがあり、地電流の異常、合歓木(ねむのき)の異常、地平線の発光現象、魚の挙動異常、など無数に挙げることができます。
というわけで、最近、地震学者は予知(予め知る)することはできないので、予測(予め推測)をしましょうと、ちょっとトーンを下げた形になりました。
『地震予測よりは予知が望ましい。』
今後30年以内に関東大地震が必ず起こるという予測では、「じゃ、これからどうするの?」という質問に答えられません。
東京を逃げ出すの?それはいつ?---------------------------