田中絹代監督、撮影風景
日本で「大女優」と云う言葉が相応しい人物をひとり挙げるならば、それは田中絹代を置いて他にいなかろう。その彼女が自らメガホンを握り、昭和20年代から30年代にかけて幾つかの作品で監督を務めていたとは、恥ずかしながら最近まで全く知らなかった。もしや昭和の日本に女性監督は存在しなかったのではないかとさえ考えていた私にとってこの事実は結構な驚きだった。こうした謂わば「進取の」気質は彼女が長州(山口県下関市)出身であることと関連づけられるのか、俄かに興味が湧いてきた。来年はぜひ稀代の映画人・田中絹代にフォーカスして鑑賞作を選んでみたいと思う

【田中絹代】

1909年11月29日、山口県下関市生まれ /
日本が世界に誇る名匠たちの作品に数多出演。溝口健二とのコンビ作は特に有名 /
1953年、成瀬巳喜男「あにいもうと」で助監を務め、同年「恋文」で監督デビュー /
近年、女性監督のパイオニアとして再評価の機運が高まる /      (Photo courtesy of BAMPFA)

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