
Theater 𝑹𝒆𝒏𝒅𝒆𝒛𝒗𝒐𝒖𝒔
【2025-No.53】
Hecate
ヘカテ
スイス・フランス 108分 1982年
異国の地モロッコで謎めく人妻との情事に溺れゆく外交官の姿を描いた「ヘカテ」はキャサリン・ターナー主演「白いドレスの女」と共に80年代を代表する魔性の女系カラー・ノワールだ。私の好みからすると本作のヒロイン役ローレン・ハットンには全く魅力を感じないので、なぜ主人公があれほどまで彼女に執心するのか理解し難いところはあるが、得てして姦通とは他人の理解が及ばぬものにして、仮に自分が同じ立場ならやはり冥府の女王たるクロチルドが張った蜘蛛の巣に絡め取られていたかもしれない。一般にファムファタールは半ば計算ずくで男の気を引くのが通例ではないかと思うが、クロチルドの場合再三彼女自身が述べているように何の考えもなく無意識に行動している点において多分に動物的でそこがまた興味深い。最初は理知的だったロシェルがクロチルドのミステリアスな態度に疑心暗鬼へと陥り、嫉妬に駆られる余り粗暴な男へと変貌していく様は実にリアル。夜の帳に包まれた闇に射し込む光のなかで浮かび上がる男と女を捉えたショットは大変美しく、それはまさしくカラー・ノワールのマスターピースと云えよう。劇中で二度流れる楽曲がシューマン作曲「子供の情景」なのはこの内容からするとなかなか意味深だ。アメリカ人のハットンが全編でフランス語を流暢に操っていたのは天晴
評価
〔演出〕★★☆
〔脚本〕★★☆
〔撮影〕★★★
〔音楽〕★★☆
〔配役〕★★☆
〔総合〕★★★★★★★☆☆☆
光と闇の表情を映したカラーフィルムとして映画史上でも屈指の出来
原題 Hecate
監督 ダニエル・シュミット
脚本 ダニエル・シュミット、パスカル・ジョルダン
撮影 レナート・ベルタ
編集 ニコール・ルプシャンスキー
音楽 カルロス・ダレッシオ
出演 ベルナール・ジロドー、ローレン・ハットン
公開 1982.11.24(仏)/ 1983.08.01(日本)
鑑賞 Amazon Prime にて11/8,11/15の二度鑑賞

