「フレンチ・コネクション 2」(1975) 米 119分

 

何となく話がまだ続くのを予感させた前作のラストを考えれば、パート2製作は必然だったとも云える。ディスクに収録されていたジーン・ハックマンへのインタビューによればウィリアム・フリードキンからメガホンを受け継いだジョン・フランケンハイマーは当初この仕事に乗り気ではなかったらしいがそれも当然だろう。高く評価された作品の続編に手を出そうものなら、様々に比較されたうえ結局叩かれるのは目に見えている。にも拘わらず果敢に取り組んだのは彼のプロ魂によるところなのか

 

本作ではパート1で暗躍したヘロイン密売人を追って彼らの根城たる仏マルセイユへドイル刑事が乗り込む。ホームのニューヨークを離れ「異邦人」となったドイルの前に様々な障壁が立ちはだかる部分が物語の中心を占めるなかで特にフォーカスされるのはドイルが敵に監禁され薬物中毒者へ身を落とすシークエンスである。しかしながら、このチャプターにおける拉致→監禁→ヤク漬け→解放→治療に至る時間経過が不鮮明なため今ひとつドイルの苦しみがこちらへ伝わらず共感性に乏しいのは非常にインパクトの大きな挿話だけに残念だ。またその他に「フレンチ・コネクション」を象徴したキレ味鋭いアクションがすっかり鳴りを潜めたことや、前作で私の推したカメラワークも凡庸な出来に終わったこと(撮影監督異なる)など、全てにおいてマイナーレベルに降格した感は否めない。こうしてみると偉大なプレーヤーを父親に持った二世の野球選手みたいで気の毒に思わなくもないが、そこはプロスポーツ界と同様に評価が厳しいショービズ界なので致し方あるまい

 

個人的に興味深かったのは薬物依存治療中のドイルがフランス人刑事と交わす会話の内容。かつてヤンキースの入団テストに受かったドイルが傘下マイナーチームの春季キャンプに参加した際、そこに居た身体能力抜群の若者を見て自信喪失し警察官志望に転向したと語り、その男こそが後に「史上最高のスイッチヒッター」と称されるヤンキースの主砲ミッキー・マントルだったんだと云う件はMLBファンには堪えられない。ニューヨーク育ちのドイルにとっては多分米国大統領以上の存在なはずのマントルを相手が知らない点も欧州との文化の違いを窺わせて面白い

 

或る意味パート1のエンディングを踏襲したような、まるで佐々木朗希が投げるスプリットの如き大胆な幕切れは賛否両論あろうが、あれこれ御託を並べるよりも逆に潔くて好感が持てる。あれを観る限り、もしかしたら製作者側の頭にはパート3の構想が描かれていた気がしなくもない

 

★★★★★★☆☆☆☆】

 

  • 原題:French Connection Ⅱ
  • 監督:ジョン・フランケンハイマー
  • 脚本:アレクサンダー・ジェイコブス、ロバート・ディロン、ローリー・ディロン
  • 撮影:クロード・ルノワール
  • 編集:トム・ロルフ
  • 音楽:ドン・エリス
  • 出演:ジーン・ハックマン、フェルナンド・レイ、ベルナール・フレッソン
  • 劇場公開日:1975.05.21 (米) / 1975.09.06 (日本)

(2025-15)

(© 1975 Twentieth Century Fox)
 
"Upcoming Film Review" ➣➣➣
マイナーリーグの野球選手を主人公に描く【二流】の男たちの哀歓
「さよならゲーム」(1988)