" Francesco "

監督: リリアーナ・カヴァーニ

脚本: リリアーナ・カヴァーニ 他

撮影: ジュゼッペ・ランチ

主演: ミッキー・ローク


今から20数年前、ローマから列車とバスを乗り継いでアッシジの小高い丘の上に建つ教会へと向かった。13世紀末にジョットによって描かれた有名なフレスコ画を観るのが主な目的だった。キリスト教の「聖地」を訪れる人々で混雑する乗合バスのなかでは様々な言語が飛び交っていた

 

バスの到着地からおよそ15分くらい石畳を歩いただろうか、目の前にシンプルな様式ながらも荘厳な建物が見えてきた。それがアッシジにゆかりある聖フランチェスコの生涯をジョットが28枚に渡る壁画として表したことで知られるサン・フランチェスコ大聖堂だった

 

本作はそのフランチェスコの伝記を「愛の嵐」のリリアーナ・カヴァーニが映像化したもので、「清貧」を信条とした聖人をミッキー・ロークが演じる。製作当時ロークはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで絶大なる人気を誇っていたが、彼の持つイメージはお世辞にも「清貧」を連想させるとは言い難く、商業的な成功を当てにするがあまりキャスティングを間違えたのではないかという不安を少なからず抱きつつ映画を鑑賞した

 

物語はフランチェスコの死から始まり、布教活動を共に行った数人の同士が思い出を回想しながら、ひとりがそれを筆記する形式で進む。興味深いのは彼らの関係がイエスと使徒に見られる「師匠」と「弟子」の結びつきではなく、あくまでも「仲間」ということだろう

 

フランチェスコが裕福な家庭環境で育ち、信仰に目覚めるまで享楽的な生活を送っていたとは知らなかった。そこを踏まえてのミッキー・ローク配役だったわけだ。妙に納得。若いフランチェスコの耳に輝くピアスも不思議と違和感はない

 

照明を使わず自然光のみで撮影されたと思われる画面は非常に暗く、特に夜のシーンでは目を凝らさないと何をしているのかわからなかったりはするものの、そんな闇の深さこそが「中世」という時代の雰囲気だった気もする

 

これ見よがしの演出を避け、悩み傷つく等身大の人間としてフランチェスコを描いた点に監督の真摯な姿勢が窺える。ただ、やや唐突すぎる終わり方には不満が残る。あそこはやはり冒頭の場面へと繋がるような流れが望ましかったのではなかろうか

 

(2022 - No.83)