ラスト・ムービースター」(2017)
監督: アダム・リフキン
脚本: アダム・リフキン
撮影: スコット・ウィニグ
主演: バート・レイノルズ

俳優とは経験を積んだから必ずしも良い演技が出来るわけではないのではないか。名優と呼ばれるデ・ニーロやパチーノにしても若い頃の方がむしろ上手かったと思うのは私だけだろうか。しかしながら、例えばリア王などの役は年齢を重ねて人生の悲哀を身をもって味わっていなければ表現出来ない部分はあるはずだし、実にその道は奥が深いと言うべきなのかもしれない

バート・レイノルズの遺作となったこの映画で彼が扮するのは人生の黄昏時を迎えた往年のハリウッドスターである。老境に達した人物が生まれ故郷を訪れて過去を振り返りつつ自らを見つめ直すというストーリー自体はよくある展開で特に目新しさはないのだが、皺の寄ったレイノルズの表情から滲み出るものには演技を超えた何かが感じられて観る者の心にヒシヒシと迫ってくる。これは酸いも甘いも噛み分けていなければ醸し出せない雰囲気であろうし、やはり演技の道とは奥が深いことにあらためて気づかされる

主人公ヴィック・エドワーズの経歴設定がなかなか面白い。マーロン・ブランドの師ステラ・アドラーに演技を学んだ彼は「セルピコ」のオファーなどを断った後アクション俳優として成功を収めスター街道を突き進むのだが、今となっては自分の選択が誤りで自身の華々しいキャリアをあまり誇りとはしていない点が興味深い。実際にドル箱スターだったレイノルズはその辺りをどう考えていたのか少し気になるところだ

エドワーズと行動を共にする鼻ピアスをしたパンキーな若者役のアリエル・ウィンターが活き活きとしていて良い。彼女は将来を嘱望される若手として注目されているらしいので今後の活躍に期待したい

(2022 - No.59)