
Theater 𝑹𝒆𝒏𝒅𝒆𝒛𝒗𝒐𝒖𝒔
【2025-No.55】𝐄𝐥𝐞𝐠𝐲エレジーアメリカ 112分 2008年
(Photo: via IMDb)
思いがけず良質な作品に巡り合ったとき、映画ファンならば少なからず幸福な気分に満たされるのではなかろうか(その反対に期待していた作品に肩透かしを喰らったときの失望が大きいのは云うまでもないだろう)今回女性監督の撮ったものを探す過程で偶然見つけた「エレジー」はまさにそんな嬉しい一編だった
美貌の教え子に心を奪われた独身の大学教授が彼女と関係を結ぶなかで痛切に感じる自身の老いと肉欲を伴う生への渇望、そして若さへの嫉妬。それらが描かれた前半部は谷崎潤一郎「痴人の愛」やトーマス・マン「ベニスに死す」と遠からず何処かで符合するような印象を与え、主人公の独白を適宜挿入のうえ、芸術文化に関する様々な言及を広く用いた作風からはウディ・アレンの影響などを窺わす
この話は老若をテーマにしつつ徹底したシニカル路線でいくのか、もしくはファムファタールめいたサスペンス調へ持っていくのか、ぼんやりと頭の隅で考えつつ画面を追っていると、やおら予期せぬ方向へ針は振れた
若さも美しさも残念ながら永遠ではない。然らば画家は、写真家は、その儚き一瞬を切り取ってキャンバスやフィルムに記憶し後世に遺す。終盤へ向かうに従い、「哀歌」を指す題名が切実になる。主人公がまるで初恋を知った少年のように純粋な涙を流す場面が胸を打つ。真実の愛と出逢うのに年齢は関係ない
~評価~
〔演出〕★★☆
〔脚本〕★★☆
〔撮影〕★★☆
〔音楽〕★★☆
〔配役〕★★★
〔総合〕★★★★★★★☆☆☆
教授の友人でピュリッツァー賞受賞歴のある詩人に扮したデニス・ホッパーが好演
監督 イザベル・コイシェ
原作 フィリップ・ロス "The Dying Animal"
脚本 ニコラス・メイヤー
撮影 ジャン=クロード・ラリュー
編集 エイミー・ダドルストン
音楽 エリック・サティ "グノシエンヌ第3番、第4番"他
出演 ベン・キングスレー、ペネロペ・クルス
原題 Elegy
制作 Lakeshore Entertainment
公開 2008.08.08 (米)/ 2009.01.24 (日本)
鑑賞 2025.11.23 DVD

