TODAY'S
 
Rendez-vous Theater

(© 2025 Wireimage)

 

マーロン・ブランドの師ステラ・アドラーに演技を学んだベニチオ・デル・トロはその圧倒的才能や型にはまらぬスケールの大きさがマーロンを彷彿とさせ、人物の内面にリアルな感情を吹き込むスタニスラフスキー式メソッドの謂わば正統派継承者と呼ぶべき俳優だ。彼の何より凄い点は両親、祖父、叔父が弁護士で自身も途中まで法律家を志していたと云う生い立ちながら、エリート風の気取りやブルジョワめいた雰囲気を一切窺わせず、ギャングや薬物中毒者、ホームレスなどの役をあたかも自分がそういう環境に置かれていたかの如く自然に演じてしまうところだ。21世紀もようやく四分の一が終わる現段階での言及は時期尚早な気もするが、ベニチオがまだ無名だったときに出演した「007消されたライセンス」の頃から彼が示す並々ならぬ存在感に注目していた私はベニチオこそ「世紀を代表する最高のアクター」と評したい

 

そんな彼の出演作がこの秋二本続けて封切り予定だ。まずは9月中旬公開のウェス・アンダーソン監督作「ザ・ザ・コルダのフェニキア計画」そしてもうひとつは10月初旬公開のポール・トーマス・アンダーソン監督作「ワン・バトル・アフター・アナザー」である。今や米国のみならず世界の映画界を牽引する両アンダーソンが揃って重用することからもベニチオの実力は明らかだろう。後者で彼は主人公役のレオナルド・ディカプリオが窮地に陥ると現れるミステリアスな空手道場の師範に扮しているそうで、新藤兼人をフィルムメーカーとして敬愛し親日家としても知られるベニチオが一体どんな姿を披露してくれるのか楽しみでならない。将来的には善悪の間で葛藤する弁護士役のベニチオなんぞもぜひ観てみたいものだ

 

  Talking about various topics

ベニチオの存在が日本で殆ど知られていなかった時期に出版された山田詠美の小説に彼の名前が記されていて、しかも本来の発音に近いベニシオ表記で、流石エイミーはお目が高いと思った記憶がある(作品名は失念)