Veach 論文に関する私的補足(11) p.67 | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

2.7.2 Russian Roulette

ここでのロシアンルーレットとは,サンプリングのテクニックの一つで,サンプルを確率的に選択することである.これは方向の選択だけでなく,サンプリング を終了するかどうかも含む.光輸送方程式は積分式であり,それらは様々な項からできているが,それぞれの項の大きさは sample に依存するので全部をサンプルすることは現実的ではない.たとえば,いくつかの項がほどんど影響しない場合や,マテリアルがある方向には反射しにくいとか いうことがわかっているのにサンプルするのは効果が薄い.しかし,全くサンプルしないと解に bias がかかってしまう.なぜなら,光がそのような方向から来る可能性は低いと言ってもいつもあるからである.


Chandler@Berlin

Figure 1. Russian Roulette: (a) non-Russian roulette (splitting) ray tracing, sample many directions when sampling a glossy surface, (b1) Russian roulette sample, sampling only one direction depends on the probability, (b2) Russian roulette stochastic termination (c) a trace path is also chosen and terminated by specific probabilities.

図1 (a) は splitting というロシアンルーレット方式でないサンプリング方法である.Glossy 面は様々な方向からの光の影響を受けるので,多数のサンプリングを行う必要がある.しかし,(b1)ではある確率である方向のみをサンプルしている. (b1)の場合には,視点からの ray を多数投げ,毎回ある確率でサンプルを行うことで,まわりを見ることになる.(b2) は確率的にray が terminate したことを示している.(b1,b2)の方式では反射や屈折によるexponential な ray 数の増大がない.一方である場所付近では多数の sample が必要になる.この際,(c) のようにパスができる時,トレースがいつ停止するかも確率的に決定される.このように停止やあるいはサンプルの方向などを確率的に選択することをロシアン ルーレット方式と言う.この手法では,半透明な面にray が当たった場合,透過のパスを選択するか,あるいは反射のパスを選択するかも確率的に決まる(あるいはそこで trace が終了するかもしれない).そのため,各ピクセルに対して多数の ray をキャストする必要はあるが,各 ray の計算時間がパスにはあまり依存しないという特性がある.これは unbias な手法で重要なテクニックである.

謝辞
Russian roulette 方式に関してコメントを下さった Leo に感謝します