なぜ LU 分解というものを考えるのか (1) | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

Gilbert Strang's Introduction to Linear Algebra 2.5

LU 分解という手法がある.日曜研究家の常として,まずは基本的な質問からはじめることにしよう.

- LU 分解とは何か?
- なぜそんなものを考えるの?

LU 分解とは表現が違うだけで Elimination (消去法) そのものである.なぜEliminationを行うのか.それは方程式を解きたいからである.問題が何かがわかることはとても重要であるが,答えが出てこないのではちょっと残念である.答えも欲しい.Elimination は線型方程式で答えを求める方法の一つである.Eliminationは式から式の定数倍を足したり引いたりして,特定の項を消していく.日本の中学校では,連立一次方程式の消去法という名前でこれを習う.まずは次の行列A を例題に使って Elimination が何かを示そう.
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A の a_{21}, a_{31}を次の Elimination 行列 E_{21}, E_{31}を用いて消去する.たとえば,E_{21}は a_{21} を消去するために,第1行を第2行から引くので,E_{21} の 21 成分が -1になっており,残りの要素は単位行列である.E_{32} はこの時点ではまだわからない.

Note: Ameba では画像が切れてしまうので画像をクリックして画像全体を御覧下さい.

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a_{21}, a_{31} を消去した結果,E_{21} E_{31} Aは次のようになる.

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ここでやっとa_{32}の 2 を消去すれば三角行列になることがわかるので,E_{32}がどんなものかわかった.E_{32}を用いてa_{32}を消去すると結果は以下のようになる.

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これが,LU 分解の L, U である.

ところで,L = (E_{32} E_{31} E_{21})^{-1} の要素を眺めると,それが符号が反転された値になっていることに気がつくだろう.対応する(符号の反転した)要素を同じ色で表現してみた.

この色の対応には私はちょっと驚いた.実際に行列のかけ算を計算しなくても結果がわかってしまう.なんと便利なことであろうか.次回はどうしてこの色の対応があるのかを考えてみたい.