名前の表記---名字を大文字にするのは通じるのか | Chandler@Berlin

Chandler@Berlin

ベルリン在住

日本語の名前を英語(ドイツ語)で表記する際にはいろいろな方法があり,混乱する.たとえば,村上春樹は,

1. Murakami Haruki
2. Haruki Murakami
3. Haruki MURAKAMI
4. Murakami, Haruki

などと表現できる.私にとって名前を英語表記にした時点でそれは日本語ではなく(私の母がその場合私の名前を読めないことでもあるし),発音も既にアメリカ流がドイツ流かで異なってくるので,「これは近似の一種」と考えてあまり気にしない.多分,個人的に,私の名前自体が例えば Hiroshi (宏,浩,弘,洋,・・・)のように同音異字のものがあり,Latin 文字で書いた時点で意味がなくなることに関係しているのだろう.千と千尋の神隠しという映画では同じ文字が異なる読み方をすることを上手く利用しているが,これは簡単には英語に翻訳できないことであって,日本語を話されない方々には気がつかれないことも多いかと思う.

それでも私が自分の名前を表記する際には一点だけ,どちらが名字でどちらが名前なのかを明確にできればと思う.おそらく 2 の場合が default で認識されるが,実はこれはそんなに明確に意思表示しているというわけでもないようだ.

ヨーロッパでは,

3. Haruki MURAKAMI
4. Murakami, Haruki

の表記によってより明確に名字を示すことができる.

しかし,3 のように大文字を名字と認識してくれるのは場合は限られている.確か本多勝一の本(今手元に本がなく,確かめられないのだが)でこのように書くべきだというものがあり,私はそれに従ってきた.ところが,ご存知の方も多いと思うが,大文字を書いてもアメリカでは名字とはほとんど認識されない.私はある会議で,「なぜ大文字を使うのか」と聞かれたことがあるが,それだけならばまだしも,ある教授に「あなたの名前は大文字で全部書くほど重要なんだね」とからかわれたりしたこともあって,私はおすすめしない.ただし,この手法はフランスやドイツでは一般に通じる.

4 の表記であるが,これはドイツの公文書で使われているものであり,フランス,アメリカなどでも通じる.そのためにこちらを使う方が良い気がする.しかし,私は実は,1 の表記を使っている.結局固有名詞なのだから,できるだけ日本語のものに近いのでいいのではないかと思うからである.どちらにせよ人と付き合う場合には説明が必要であるし,こう書くことで会話を始めることができたりする.コミュニケーションに有用であるためにこのように書くようにしているが,まあ,結局の所そんなに厳密に気にしているわけではない.

また,ドイツの公文書では様々な人達がいることに配慮してか,
first name
family name
とどこにどのように書くのか指定されていることが多いので,それに従えば良い.

ただし,3 の「名字を大文字で書く」表記が世界では一番通じない部類に入ることはもうちょっと学校とかで教えてもらってもいいんじゃないかなと思う.なぜかこの一番通じにくいものが,日本では一番使われているような気がする.


謝辞

ようやくネイティブでプロのライターに意見を伺うことができ,この話を書くことができました.Mike, Rachiel, Kelly に感謝します.