前回丸は数を示す記号といったが,Peano の定義にはでてこない.定義されたのは Zero だけであり,Zero は四角を使ったのであった.機械に2つの数を教える時に四角を使っているだけでは Figure 2 のようにどこで区切りかわからないので,丸を使って区別しているのだ.空白記号(スペース)を使えばいいではないかというかもしれない.もちろんそうだが,スペースという記号もやはり機械に教えなくてはいけないのだ.たとえて言えば数字の 0 のようなものが必要なのだ.0 というのは「何もないということがある」ことを示している.何も書かないとあるのかないのかまったくわからないが,0を書くことによって「0 がある」ことを示すことができる.0 は「無いことを示すことができる」のでまったくすばらしい.ところでスペースと言えば日本語には単語を区切るスペースがない.だから日本語処理は単語を区切る形態素分割から初まる.スペースは何もないことを示す文字である.これも 0 同様にすばらしい発明である.老子で言えば無用の用であろうか.
λ計算での数,チャーチ数は Figure 1 と同じように定義される.
1 := λ f x. f x
2 := λ f x. f (f x)
3 := λ f x. f (f (f x))
よく見ると f の数が自然数に対応していることがわかるのではないであろうか.結局,1 を f 一つ,2 を f 二つ,3 を f 三つ,で示しているのがチャーチ数である.これが数の定義である.これは Figure 3に示すように Figure 1 の表現とほぼ同じことがおわかりだろう.

マービン「長かったですねえ.ブログ9回目でやっと数を定義できただけですか.Wikipedia の Page ではチャーチ数が出てきた時にはλの定義も終ってますよ.しかも単なる「四角の数」で数を定義するという単純さ.いや単純さが悪いわけではないのですが,簡単なことを学者ぶって単に難しく言っているだけに見えますねぇ.どうやって計算するのかもまだこれからとは.私のように宇宙を5回も経験した者でもこんなに遅いと気が滅入りますね.」
しかし,マービン,チャーチ数がどんなものかはわかってもらえたのではないだろうか.チャーチ数をそのまま出しても Peano の定理がないとこれが自然数だとはわかりにくいのではと考えたのだ.Peano の定理それ自体も定義だけ読んでも味気ないと思うのだが.
マービン「どうですかねえ.私は疲れました.まあ数は定義できたのかもしれませんが,計算に不向きと言われているローマ数字の方がまだましのような.2008を書くのも大変だ.私のコプロセッサも気が滅入ったようです.」
ようやく数が定義できたので,次は函数について考えよう.
OK. We have now numbers, let's compute it... so functions.