「伊予田さんは、これからどんなものを撮りたいの?」


「写らないもの、でしょうか」

「わたしは雨の匂いとか、街の熱気とか、悲しい音楽とか、嬉しそうなこえとか、誰かを好きな気持ちとか、そういうものを撮りたい」


「全部、写らないものだ」


「はい。でも確かに、そこにあるものです。カメラを持って歩いているのは、写らないけれども美しいと思えるものに出会いたいから。そのときここにわたしがいて、感じていたなにかを残すためにシャッターを切ります」