何かが足りない-第一章 迷い-
前回までのお話は、こちら(目次) から
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『今度の日曜日、ゴルフなんだ。その後、食事でもいかないか?』
『うん。いいよ。何時?』
『また、もどったら電話する。』
『了解。連絡待ってるね。』
そんな、メールのやり取りをした後、私は携帯を抱きしめた。
どんなに頑張っても一人の力じゃ、どうにもならないこともある。
でも、大好きだから、この状態でも仕方がない。
大人になると面倒なことが嫌になる。
私の大好きな彼の場合は、どうやら、付き合うということが苦手みたいだ。
彼女にしてしまうと、別の女の子と遊べなくなるし、別れる時に面倒なことになると困るしと遠まわしに言う。多分いつまで経っても私は彼の彼女にはなれないのだ。
私は一人ため息をついた。
あっ、電話。
一瞬「ドキッ」とする。ほとんど私に電話をかけてきてくれない彼が電話をかけてきてくれたのかと思う。
でも、大抵、彼は電話をかけて来ない。
私たちの付き合いは彼が中心で私が思うようには決してならない。
やっぱり今日も違った。友人のやっちゃんからだ。
「もしもし。」
「あっ、ユウコ。それが星田君がさぁ。」
「うん。どうしたの?うまく言ってるんじゃないの?」
こういう時の友人の電話は、がっかり半分、嬉しい半分だ。
しばらく、彼と私の関係を忘れることが出来る。
私は吉岡ユウコ。29歳。
なんだか最近疲れている。
しばらく、やっちゃんと電話をする。
「で、ユウコは恋愛のほうどうなってるの?」
「別に、何にもなってないよ。」
「そっか。」
やっちゃんには、今の恋愛のことを詳しく言っていない。
電話を切った後、私は、もう一度深くため息をついた。
日曜日か、後4日。それまで、彼は電話をくれるのかしら?
くれないだろうな。
メールでのやりとりだけじゃ、辛い。
他に彼女が何人もいるかも知れないから、こちらから電話もかけれない。
私って、本当に都合のいい女だ。
いつからこんな恋愛をするようになったのだろう。
私はソファーの上に寝そべって、天井を見上げた。
蛍光灯の光をじっと見つめた。
まぶしくて、涙が出た。
寂しい。もうこんな恋愛はやめよう。
一途に思い続けるのは自分が苦しいだけ。
次、彼に逢ったときに言おう。
「もう、二人で逢うのはよしましょう」って。
私は、彼のメールを、もう一度見た。
「愛してる」と初めて言われたときのことを思い出した。
忘れよう。もっと悪いことを思い出さないと。
でも、悪いことは思い出せなかった。
やっぱり、彼が私のことを必要としてくれている限り、私は、彼から離れられない。
人は色んな苦しみから耐えられるように、辛いことは忘れるように出来てるんだ。
でも、今は思い出さないと前に進めない。
私は、ぎゅっと手を握ったまま、気がつくと眠っていた。