あ~あ、やっぱりか・・・。

あたしはいっつもそうなんだよな。

目先の小さな幸せに我慢できずに飛びついて、その後の大きな幸せを逃してしまう。

買い物とか後からいいものが見つかるんだよね。

ご飯もおなかすいて我慢できなくなって適当なところに入って、後から美味しそうなところを見つけてしまったり。

またやっちゃったかな。

今の自分が苦しくって、彼に電話してしまった事を後悔。

やっぱり重かったかな。

最近順調だったのに、そんな事言っちゃたから彼が引いちゃったかな。

何もないフリしてれば、順調なままでいれたのに。

今日も鳴らない携帯を見つめながらそんな事を思ってた。

やっぱり放置プレイだ。

もしかしたらこのまま会うことは無いのかもしれない。

それでも仕方が無いか・・・。

そんな事を考えて、諦めていた頃、不意に彼からのメールが届いた。

いつもよりだいぶん遅い18時近くになってから。


「だいぶ治りましたか?焦らずゆっくり治してくださいね。連絡しない方が良かったかも知れないけど、一応」


そうとう嬉しかった。

彼はあたしのことを考えてくれていたんだ。

連絡しない方が、とあるけど、違うんだよ。

あたしはあなたからのメールでこんなにも幸せを感じれるんです。

あたしが欲しかったのは、あなたの優しさなんです。

ほったらかしにされることは嬉しくないんだよ。

ただ優しい言葉をかけてほしかっただけなんです。

何通かやり取りして、今日会うことになった。

彼はしきりにあたしの体調を気にしてた。

でもやっぱり会いたかった。

彼がとっても気遣ってくれているのが所々でわかる。

なんといっても優しかった。

会ったのはもう7時だった。

それなのにラブホに行った。

いつもだったら時間を気にする彼なのに。

いつもよりいっぱい口付けを交わし、いつもよりたくさん愛撫してくれた。

彼なりのあたしに対する優しさ。

でもそんな優しさだけで、あたしは充分満足できた。

からっぽだった心が満たされた。


でも、なんだろう?

以前ほどの盛り上がりがなかった。

彼に会えた喜び、彼と一緒にいれる幸せ、彼と離れる寂しさ。

そんなものが全くなかった。

そう思い込もうとしていたからか、気持ちが冷めてしまってるか。

意外だった。

久しぶりに会う彼に、あたしは普通でいられた。

そして今日はいつになく謙虚な気持ちになれた。

「今日は会えて楽しかったです。ありがとうございます」

そう帰りの車でメールを送った。

彼からは「お礼を言われるような事してないよ」と返ってきた。

でも今日はそんな気持ちだった。

色々考えてたからかもしれない。

今日は会ってくれてありがとう。

一緒にいてくれてありがとう。

すごく嬉しかった。

そう思った。

何も思っていない女に優しくしてくれてありがとう。

卑屈じゃなくそう思った。

あたしが逆の立場なら・・・。

きっとあなたみたいに優しくはないわ。

そう思うとあなたの優しさが心に染みた。

いつの間にか自惚れてたあたしは、彼に気付かされた。

だから会ってくれてありがとうと思えた。