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誰も居ない部屋で
電話をみつめながらの生活が始まった・・・。
◆親友の有難さ
何をするにも身が入らず、ゆかりさんからどうしたのと詰問を受け、それまでのことを話した。
「何やってるのよ!お父さんは嘘ついてるんだわ。きっと実家にいるはずよ。ダメ元で行ってみなよ。」
「判った。そうするよ。」
その日、自宅マンションへ帰るなり実家の親友に電話をかけた。ゆかりさんに話をしたのがきっかに、誰かに話を聴いてほしくなったのだ。
「てっちゃん。俺どうすればいいんだろう?」
「判った。明日俺時間つくって章ちゃんのところにいくから。いいか?つまんないこと考えるなよ!」
持つべきは親友だ。細かい理由も聞かず実家の関西から来てくれるというのだから。その週末、ことの顛末を洗いざらい話した。彼は明日実家へ行こうといい始めた。居るか居ないかどうでもいい。今は何か行動しないと、お前が壊れてしまうからといって。
◆彼女の実家へ
翌朝、てっちゃんと連れ立ってアポなしで彼女の実家へ向った。彼女の実家はひっそり静まりかえっていた。インターホンを鳴らすと家政婦の平さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさい。あの・・・順子さんと奥様とご一緒では・・・。」
咄嗟に彼女が居ないことがわかった。恐らく事情が事情だけに平さんには話をしていなかったのだろう。機転をきかせて、用があり近くまで来たのだと嘘をついた。そして平さんに彼女の父を呼び出してもらうことにした。
「おっ・・・。桜井くんか・・・何だね。ここにはおらんといっただろう。私の言うことが信じれんのか・・・。」
「いいえ・・・。今日来てみて様子はわかりました・・・。あの日以来、私はどうにかなってしまっています。彼女とお腹の子の事が頭から離れないのです。」
「君・・・。」
1時間ほど父と会話をした。しかし、彼女の父は言葉少なく、そして言葉につまりりながら話てくれたが。彼女の行方を決して言い出さなかった。埒が明かなかった。このまま居座ろうとも思った。しかし、父がこのまま無茶を通すなら警察を呼ぶぞと感情的になり始めた。
仕方なく私は彼女の実家を後にしたのだった。
「てっちゃん・・・。これだけ励ましてくれたのに待たせてごめん。もうだめだよ。これ以上何をやっても無理だよ・・・。」
「諦めんな!順子さんを信じろよ。」
てっちゃんは激しく私の肩を何度も何度も揺すった。自分の身におきたかのにように、てっちゃんは泣いていた。泣きたかった・・・もう、出る涙はもう残っていなかった。
目の前が真っ暗になった。
脱力感にみまわれもう立つことさえできなかった。
親友に肩を抱かれ後ろ髪をひかれながら空港へ向うのだった。