北海道で負った怪我の手術を終えて

ようやく羽田発小松空港行きに搭乗した。


しかし夢はいつか覚めるものだ。



◆夢から覚める


機内サービスの麩菓子をほうばりながら、楽しかった北海道旅行の話題で私達は盛り上がっていた。今朝、手術した事を彼女に告げると、ジーンズで隠れていたせいか、彼女は嘘だと思っているようだった。会話も一息は入り、旅の疲れから、引き込まれるように眠りについた。暫くの後、機内アナウンスで目が覚めた私は、シートベルトに手をかけようとした瞬間、左脚に激痛が走った。

「あ、やばい!」

北海道からの緊張が解けたせいで、本来の痛みを感じ始めたのだ。ランディングを済ませ、空港に降り立った時には、彼女の肩に手を掛て歩いていた。痛みに顔を歪める私を見て、今朝手術をしたことを彼女は信じはじめた。

予定していた観光を取り止め、そのまま宿泊先のホテルへ向った。暫く安静が必要だろうと、彼女は私を静かに寝かしつけくれた。着替えの際に包帯でグルグル巻きになった膝をみて、私が2昼夜不眠不休で、彼女との旅行のために無理をしてきたことを始めて判ったようだった。

いつも鼻先の強くおしゃべりな彼女も、その日だけは無言で介護してくれたのは今も忘れない。わざわざ観光に来ているというのに、外出もせず、私の側にいてくれた。その夜、目覚めた私は抗生剤を飲むためにホテル内のレストランで簡単な食事をとり、また寝入ってしまった。


◆彼女はマドンナ


翌日、彼女に申し訳なく思い、足の痛みは治ったと嘘をついて、市内観光を楽しんだ。金沢の夏は暑く、額から汗が吹き出るのだが。痛みをこらえる冷や汗ともつかない状態で、体の痺れを覚えるほどだった。なんとか、かんとか痛み止めを飲み、その日一日、彼女を楽しませるこたができた。

しかしその日無理してしまったために、その夜、処置した膝が腫れ上がり、またしても彼女に負担を掛てしまうのだった。私は言葉がでなかった。あれほど無理をして旅行に来ているというのに彼女に迷惑を掛けているのだから。

「ごめんね。順、、、」

「うん。いいのよ。約束を守ろうとして無理してくれたんだもの、私は嬉しいの。それより早く怪我を直さないとね。」

うとうと、眠りにはいるものの、痛みで何度も目を覚ましますの繰り返しでした。彼女は朝まで起きていてくれて、私の膝を冷やすためにタオルを何度も何度も交換してくれた。彼女の献身的な介護もあって、翌朝、痛みはなくなっていた。いつもはお転婆な彼女だったが、こんな時、頼りになる女性にいつまでも一緒にいたいとおもったことはない。まだ、出会って4ヶ月ほどだったが。彼女の献身さには、その後14年間頭が上がらなかった。

私が無理すればするほど、結局は彼女に負担を掛けてしまう。そんなことの繰り返しを、若かった当時の私はずっと繰り返していた。



男性は「母のような女性」の姿に見とれてしまう。


どんなに喧嘩をしようとも


献身的な姿に怒りもおさまってしまうものなのだ。




つづく。



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