昨晩、仕事を終えて帰宅した僕に、友人の一人が電話をかけてきた。「でも、いっちばんムカつくのは姑じゃないのよ…あのマザコン男なのよっ!!」獅子座O型の彼女、O子は、挨拶も済まぬうちに憤慨やるかた無いという様子で受話器越しに叫んだ。

毎週金曜日は……
 


麗しい女性の皆さま、いかがお過ごしだろうか。

 

金 猛得だ。

(この記事はアミィが書いています)

昨晩、仕事を終えて帰宅した僕に、友人の一人が電話をかけてきた。





「もう本当に許せないのよ!あのマザコン!軟弱男――!」




獅子座O型の彼女、O子は、挨拶も済まぬうちに憤慨やるかた無いという様子で受話器越しに叫んだ。

 

電話をしたいと言われてから5日、冷静になればとのらりくらり躱していたが、冷静という文字は彼女にはなかったらしい。

 

一度怒り出すとそれこそ獅子のごとし勢いでとにかく収集がつかないO子だが、怒りを全て吐き出せばすっきりするので、僕は新しく買ったアイスクリーム機を組み立てつつ、O子のストレス発散に付き合う事にした。
O子は、金持ちの次男坊を捕まえ近々結婚するらしいが、家宅の購入について姑戦争が勃発しているらしい。

「あいつの親、嫁を子を産む道具としか思ってないのよ!頭金を出すのに、契約書を書かせようとしたのよ?私を詐欺師だとでもいうつもり?私を信用してないなら結婚しなくて結構よ!大体あんたらの息子が私の事好きで好きでしょうがなくって結婚を申し込んできたくせに!!」

「あんたの親には一切頼りたくないって彼に言ったのに、良いじゃないか、金は親に借りたら利子もないわけだし…ってあのボンボン!!」

「たしかに、私はこっちに来たばかりで住民権もないわよ!仕事だって始めたばっかだけどあんたらのドラ息子よりすぐに稼げるようになるっての!」

「大体ね、頭金を支払っているのはそっち、金を支払っているのはそっちだからっていつもえらそうにするけど、じゃあお前らの息子の子供を産む事で私が失う時間と若さと青春はどうしてくれるわけ!?女は子供を産む道具じゃないのよ!!」

「この間のごはんの後だって、満漢全席たのんだ後、あいつの母親なんて言ったと思う?『あなた、残ったのは持って帰りなさいな、普段めったに食べられないでしょ』って!!ふざけんじゃないわよクソババァ!!」


話せば話すほど怒りが舞い戻ってくるのか、窒息してしまわないのかと心配になる勢いで矢継に話すO子。



「でも、いっちばんムカつくのは姑じゃないのよ…あのマザコン男なのよっ!!」



ここ数日は怒りのあまり眠れず、別れすら考えているというO子。
僕が知る限り、O子の彼は苦労を知らない金融会社社長の末っ子で、O子にベタ惚れの上になんでも彼女の言いなりだった筈だ。

「確かに、あいつは良い子よ。でも何から何まで私が世話しなきゃいけないの!私が何度注意しても、何度やってと頼んでも、口先では「すぐやるよ」「ごめんね」「大丈夫、ぜんぶ上手くいくから」と言って結局何もやらないで、最終的に、ぜーーーんぶ私が予想した問題に直面しているのよ!」

それは良い子ではないと僕は思ったが、口を挟む隙は全くないので、僕は黙ってO子の話を聞き続けた。

 

 

「私を知っているでしょ。私は言いたい事ははっきり解りやすく伝えるタイプなの」


もちろん解っているとも。そうして、解りやすく伝える天賦の会話技術のもと、彼女は彼にぐうの音も出ない正論をぶつけた。

 


「お義母さんの前で私を守るのはあなたの義務よ!」

「伝言ゲームの役割だけするなら、それはただの馬鹿だわ!どうして私とお義母さんが上手くいくようにもっと何を言ったらいいのか少しも考えられないの?」

「あなたがそんな受け身では私はとてもあなたと家庭を築ける気がしないわ。今までなんでもかんでも親にまかせっきり、寄りかかりっきり、結婚したら今度は私にそうするつもりなわけ?いい大人がいつまで他人に面倒みてもらうつもりよ!」

「少しは自主性を持てないの!?あなたの目的は何?私と結婚する事でしょう、ならそれを円満にするにはどうしたら良いのか、バカじゃないんだから頭を使って考えなさいよ!」



正論だ。心臓が痛くなるほどに正論だ。



「彼はその場では、そうだね、君の言う通りだね、大丈夫だよって良い顔で私を宥めるの。でもね、結局なーーーんにも変わらないし、何もしないのよ!!どういうことっ!?」


それは彼の処世術であって彼は変わらないと伝えたかったが、O子の機関銃トークに割りこむタイミングが全くつかめず、僕は頷き人形の如くひたすら相槌を打ち続けた。
そうして一時間ほどひたすら喋った後、O子は「もう喋りすぎて疲れたから、今日はもう寝るわ」といって電話を切った。仕事で削られたHPを根こそぎ持っていかれ、廃人のようになっている僕を無情に残して。

とりあえず、O子には何も伝えられなかったので、もし同じ事に悩んでいる女性がいたら、参考にしてほしい。

僕を見て解ると思うが、男というのは基本『聞く事』があまり得意ではない

 

いや、これは少し語弊があるので直そう。男の「聞く」という行為と、女性の「聞く」という定義が違うのだ。女性にとって話を聞く事は、相手の気持ちを理解し、寄り添う事だ。

 

一方男が話を聞く時、まず問題がどこにあるのか、結論はどこにあるのか、分析解読しながら聞いていく。なので参考書や文献やニュースを読み理解することは全く問題ない。
じゃあなんで私の話は全く伝わらないの!と思う女性は、以下の行動で男の聞くという行為を妨げているか、苦しいものにしていないかを確認してほしい。
 

時間系列に沿って、感情や関係ない事を入れて話す。

 

例:「昨日、友達のM子が私に頼み事をしたんだけど私すっごく忙しくて出来なかったの。本当に忙しくて出来ないって言ったのに、M子はなんか機嫌悪くなっちゃって。私だって忙しいのに、しかたなかったのに…。M子はそもそも、前からすぐに小さな事で人に頼み事ばっかりして自分で解決する意思がないのよ、そういう甘えってやっぱりお嬢さんだからなのかしら。そういえばD子はお嬢さんでもしっかりしてるんだけどね」

上記のような話があった場合、話の脈絡が飛んだ瞬間に男は頭がこんがらがり、困惑で情報処理をやめてしまう。もしくは「覚える必要のない情報」だと判断し、聞く事をやめてしまう。物語や出来事を覚えるのは、女性が得意とする分野で、そもそも男は話を覚えられないのである。なので、君たちの出来事を話したところで、まず男は覚えられないと考えた方が落胆しないだろう。

 

 

話している時に感情的になる。

 

地震、雷、家事、親父。

 

万人の恐怖がこれならば、男にとっての恐怖は失業、インポ、嫁、ヒステリーだ。
女性にとっては日常的気分の上下は、多くの男にとっては天災の如し恐怖を与える。
なぜなら、男が感情を表すのはよほどの緊急事態だからだ。
君たちが男に激情をぶつける時、男の脳内はいかにしてこの緊急事態を抜け出すか、そればかり考えてしまう。
『だったらなおさら私の話を聞いて、気持ちをわかってくれたらいいじゃない!』と君たちは思うかもしれない。しかし、考えてほしい。
大地震が起きた時、正しい避難方法を知っていても、実際それを実行できる人はどれぐらいいるだろうか?人間は緊急事態になるとまず、習慣に基づいて動く。緊急事態だからだ。一秒の無駄が死活問題だからだ。
O子の彼氏の場合、過去から母親がヒステリックになった時は承諾、肯定する事で母の怒りを宥めてきた成功経験があるのだろう。だからO子がダメ出しをしたり怒りを露わにした時も同じ事をするのである。その場しのぎの解決法として。

 

男が聞きたくない時に話す。

 

君たちにめった刺しにされることを覚悟でいうと、正直なところ殆どの男は話を聞く事が好きではないしとくに女性との話は面白くないと思っている。
それでも君たちに『話なんて聞きたくない』と言う方が怖いので、ほとんどの場合は黙って聞いている。聞く事に楽しみはなく、君たちへのサービスだ。なので、脈絡のない話でも、最後に君たちが笑ってくれれば、聞いて良かったなと思ったりする。
男は、愛する女性を喜ばせたいのだ。

 

しかし、回答にダメ出しをする、納得いかないと反論する、あまつさえ叱られたりなどした日には瞬く間に『彼女との会話=拷問』と脳内データに保存され、退屈で辛い授業のごとく、内容も一切耳に入らなくなる。

 

 


O子の話を聞き、男性心理の全てを解き明かした本『スターリングメソッド』の一文を思い出した。

 

エゴが危険に晒されておる限り、彼が貴女に本当の意味で心を開く事はない。だがもし貴女が全面的に彼を受け入れ、愛している事を理解すれば、彼はとても協力的で寛容な男となるだろう。彼はエゴを危険に晒す事なく貴女を満足させる事ができ、貴女は長期的に平穏で、満たされる恋愛関係を勝ち得る事ができるのだ。

 


ここに、すべての解決法が眠っている気がしたのだ。
男だけでなく、姑だけでなく。
人を動かしたいならば、まず愛を与えるしかない。
愛を与え、自分が信用に足りる人間だと相手に信じてもらえるまで、努力をするしかない。
それが唯一の、人を動かす方法なのだ。

とはいえ、友人にこう伝えるのはなかなか勇気がいるもので。
誇り高いところは彼女の魅力でもあるわけで、なかなか悩ましい。
彼女が一日も早く円満な関係を築けるよう、祈るばかりである。

 

 

 

 

 
タヌ子よ、聞いていたか。O子はお前の未来のようにも思える。
同じ轍を踏まないように気をつけなさい。

 

 
ふ・ふ・ふ~!父様知らないのね!最近の私は愛の妖精・あざらんのおかげで生まれ変わったのよ!?

 

 

 
(…心配だ。)

 

 

 
あ!そだ。みんないつも応援ありがとう!

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2018 アミィ