Jack of  all trades   season  Ⅱ    です



豪奢なシャンデリアが眩く煌めく大広間。タキシードやドレスに身を包んだ男女が踏みしめる床は大理石でできており、柱は金。調度品も金がふんだんに使われた物ばかり。

「如何にも"成金"、だな」

そういった感想を誰もが抱くが、あえて口に出すものはいない。<壁に咲いた一輪の花>を除けば………。

「K、あえて言うなよ」

シャンパングラスを持った男が苦笑しながら近寄って来て、グラスを一つ差し出した。

「だぁって、さぁ……。なんか目がチカチカしちゃうよ、J」

美しき壁の花は、ツンと口を尖らせながら、Jと呼ぶ男からグラスを受け取った。

琥珀の液体をこくり。

「あ、うまっ」

呟いてゴクゴクとグラスを空にすると、それを見ていたJは小さくため息をついた。

「K、居酒屋じゃねーんだから。あと、あまり顎上げんな」

「無茶言うなよ。大体こんな格好する必要あったの?」

こんな格好、と自分の姿を改めて見てみる。

ロイヤルブルーのドレス。スカート部分は幾重にもレースを重ねてふんわり広がり、足首まである。長さの割には軽いのは普段着なれない身としてはありがたい。
が、デコルテが結構大きく開いてるのがとっても気になる。胸元にも沢山のレースがフワフワ重ねてあしらわれてるので、胸の大きさは気にならないが、色々バレやしないかとドキドキする。
なんだってこんなに胸元開いたドレスなのか、とJに抗議すれば、ニヤリと笑ってプラチナにダイヤが輝くネックレスを付けられた。

確実に数百万はするであろうネックレスにそっと指を這わす。
宝飾品に詳しくないが、恐ろしく高価なものをつけられて、先程から肩が凝って仕方がない。

「カップルの方が目立たないだろ。とにかく、ミッションが済むまで大人しくしてろ」

Jは華麗にウインクしてみせるが、果たして自分たちが目立っていないか、といえばそれは嘘だ。さっきからものすごい視線を感じる。
自分一人でもかなりの視線を集めていたが、Jが側に立つと、会場内のご婦人の目が一斉にこちらを向いたのだ。


Kははぁーとため息を付くと、Jが持つグラスを奪い取り、再びゴクゴクとシャンパンを飲み干してやった。