「ありがとうございましたっ!」

待ち合わせていた路地裏で、深々と頭を下げるユートをやや引きながら見やるジュン。

「いや、まあ……。取り戻せてよかったよ」

ユートの依頼は、完遂出来た。だが魔対からの依頼は……、犯人を消し去ってしまったので失敗したことになるのだろうか……。
ジュンは複雑な結果に気が重くなるのを感じた。

「あの……大丈夫っすか?」

そんなジュンの様子に、ユートが不安
そうに声を掛けてくる。

「あ、いや。……ところで、報酬のほうだが…」

コクリと頷いたユートは、背負っていたリュックを下ろし、中から紙袋を取り出した。

「急いでたんで現金には出来なかったんですが。あ、でもちゃんとホンモノなんで。鑑定書も付いてるんで」

「?」

渡された紙袋の中には、文庫本サイズのジュエリーケース。
ジュンがケースを取り出し開けると、白金の輝きの中央にマロン大の、

「ダイヤ………。プラチナの、ネックレス……。お前ん家って、一体………」

「一応、宝石商です。ウチの1番の品ですけど、この家宝が戻ってくるなら惜しくはないって、親父が……」

ジュンは、あの白い胸元でこのダイヤが輝くのを想像して、ニヤリと笑った。

そしてケースを紙袋に仕舞うと、クルリと踵を返した。

「じゃあな、もう奪われんなよ」

ユートにそう言い残し、ジュンは闇へと消えていった。



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トクン、と胸が震えた。
トクン、トクンと再び震え、蒼い煌めきが見えた。

━━━━サトシ…………

フルフルっと睫毛を揺らして、カズは目を覚ました。枕元のオレンジ色の照明に包まれた部屋に、サトシの姿はない。

あぁ、けれど。

彼はじきに戻ってくる。事を終わらせて。

カズは再び目を閉じた。

目覚めのキスを、貰うために。






トン、と軽やかに屋上に着地すると、サトシは漆黒の翼を仕舞った。そして、クンと袖口の匂いを嗅いで眉をしかめた。

「眠り姫を起こすのは、シャワーを浴びてからだな」

おそらくカズがそろそろ目を覚ますだろうと思っていたが、ヤツの臭いが染み付いているようで、そんな体でカズに触れたくはない。
シャワーを浴びる時間位は、狸寝入りで待っていてくれるだろう。

愛しい人の、そんな可愛い行動を想像してニヤけるのを抑えながら、サトシは部屋に向かった。