カップを両手で持ってチビチビココアを飲むカズくん。
もうそんなに熱くないと思うんだけど、猫舌なのかな。

話はそれなりに弾んで(てゆうか、カズくんが聞き上手なんだよな)、俺は今30でしがないサラリーマンであり、日々色々な苦労をしてるんだ、となんだか愚痴のようになってしまった。

「へぇ、そうなんだ。サラリーマンも大変なんだね」

カズくんはどこか他人ごとな感じで相づちうつから、やっぱり普通のサラリーマンではなんだろうな。

そもそも、成人してるのか?
今のような喋り方は俺とそう大差ないように感じるけど、子猫のケイと遊んでいるときの笑顔は18,9のようにも見える。

「あのさ。カズくんは今いくつなの?」

するとニヤリ、笑ったカズくんは俺の顔を覗きこみ

「いくつだと思う?」

と聞いてきた。やっぱりそうくるよね。だから俺はさっき思ったことをそのまま言った。

するとカズくんは弾かれたようにアハハっとのけ反って笑うと口角を上げたワンコ顔で俺をじーっと見つめた。

「ハズレ。25だよ。ちゃんと成人してるから、安心して」

なんだぁ、良かった。成人してるんだぁ。

「て、なんで『安心して』になるんだよ。なんか俺がイケナイこと考えてるみたいじゃん!」

あ、しまった……。そう思った時にはもう遅い。

俺を見つめるカズくんの瞳がすぅーっと細められる。

ドキン……

鼓動が跳ねる。

キラリ、と光る瞳はいつの間にか妖艶さを纏って俺を射止める。

「大野さんは、オレのこと、……好き?」

「は?え?やっ、その………」

俺の顔はみるみる赤くなり、口を開いてもまともなことも言えず、しまいに口ごもる。

ここで俺が『そうだ好きだよ』と答えたら、カズくんは一体どんな反応するだろう。

男同士で気持ち悪いとドン引きするだろうか、そこまでいかないまでもやんわり断られるだろうか。

いや、でも。全く好意がないのに、こんなこと言うかな。

ねえ、カズくん。
その思わせ振りな発言の真意は?

ぐるぐる……

真っ白になる頭……

あー、どーしようー


チュッ


えっ?

えぇっ!

「ふふっ。オレは好きだよ、大野さんのこと」