これが現実!!
とある便で、私の担当範囲は、
ほとんど中高年の団体さんで埋め尽くされていた。
みんな似たり寄ったりの格好で、見分けがつかない。
帽子+めがね+リュック or 帽子+めがね+斜めがけ のどちらかだ。
この日も、朝から元気よく「おはよーございまーすぅ」とご搭乗された。
たぶん 一番元気な世代だわ・・・
あと2便もあるし、この便で精気を吸い取られないように
ペース配分気をつけなきゃね。
逆サイドの先輩と、互いに目を合わせて確認しあった。
案の定、質問攻撃。
機内を指差して 「自由席?」
(だといいけどねぇ・・・・新幹線じゃないから!!)から始まり、
半券を見せながら「15Cってどこ??」
「95番って・・・・」 (それ搭乗口!)
「田中さんどこ??」 (知らん)
いいんですよ、なんでも答えれる範囲なら答えます。
一便目ならね。心はまだ真っ白だから。
困るのが
・「○○さんと席を隣りにしてほしい」が為の
リュック背負って数人で機内逆流。
・自分の荷物の処理でいっぱいいっぱいの
通路ふさぎ。
・「あ~ 佐藤さん、席そこ??あたし ここ~」という
大声でお互いの位置確認。
時間はたっぷりあるから、とりあえず落ち着いて座りましょ♪
乗りなれてる人だと、「また 羽の上だわ~」なんてぼやいています。
しょうがない。おたくら団体さんで、バランスとってるんで・・・
団体さんが数件入っていて、予約数が少ないと、
だいたい翼のあたりにまとまって座っていただきます。
しっぽ側にたくさん座って、バランスとれなくて飛行機しりもちついたら嫌でしょ。
たまに下のコンテナで調整とることもあるみたいですが。
私が仕事をしていた頃は、後ろの窓側であいてるところに
景色が見たい方をご案内していました。数名だと良かったような。
今はマニュアルが変わってるのでどうだかわかりません・・・。
そして次に ドアクローズして、安全のビデオが始まります。
興味津々。視聴率かなり高いです
たまにテレビがついていない古い機種だと、
CAが実際に救命胴衣をつけ、ご案内します。
こちらのほうが高視聴率!!
みんな 目玉がこちらを向いてます
こ、コワい。
でも良いことです 安全は皆で守らないとね。
救命胴衣の説明が終わると、みんな拍手
いやいや、どうもありがとね~
ちょっとスター気分で通路を歩けます。
それから離陸し、今度はポーン、ポーンの嵐。
そう。CAを呼び出す、あのボタン。女性のマークがついた丸いボタン。
皆、安全のビデオが終わり、離陸するまでの間に音楽を聴きだす
だけど、いっぱいボタンがあってよくわからない。
「あら 聞こえないわねぇ。ここかしら。それともこっちかしら」
ってボタンを押しまくるわけ。
「あら、音楽なんて聴けるの?じゃあ私も」
なんてお仲間も皆、イヤホンをして、
肘掛のボタンをPUSH PUSH!!
押しすぎちゃって、離陸の合図のポーン ポーンと重なって
ポポポーンポポーポーンっておかしくなる。
新しめの機種だと、どこがお呼び出ししてるか、番号が画面に出るようになっていて、
見ると、ずらーーーーっと あそこの団体ご一行様の番号が
21A 21C 21E 21F 21G 22B 22D 22E ・・・・・・
本当に具合の悪い方がいた場合はどうするんでしょうか。
離陸した頃には、使用方法がわかった人がお隣さんへ、
そしてまたお隣さんへと教えていってくれるので、
ベルトサインが消え、機内を巡回すると、
満足げな表情で皆イヤホンを耳に落語を楽しみます。
イヤホンを正しくは 聴診器のように下向きに使うのですが、
たまにヘアバンドのように上向きにつけていて、
イヤホンのコードがうっとうしくないのか
顔の前に垂れ下がっている方がいます
まるでエイリアンのようです。
おぐしの薄い方になぜか多いので気を付けて!
入社1年目は、「あのおじいちゃん、かわいいです」
と発見したら先輩に報告してました。
先輩は「あー そのうち見つけるたび腹たってくるよ」
と言ったような気がしたけど気のせいかな・・・
それからサービス(この時もイロイロあります)が終わり、
中高年のお菓子タイム。
おかきを後ろから前へまわしてと、まるで修学旅行!
でも高校生達と違うところは、袋ごとおかきを食べたりせず、
きちんとティッシュペーパーの即席受け皿で自分の分をとりわけ、
お行儀よくいただきます。
さすが。中高年はこういうところが違うわね。
感心していると
「ちょっと~ すいませ~ん」
誰かが呼んでます。急いでそちらへ向かいます。
すると、テーブルの上に
たくあんがいっぱい入ったタッパーが・・・・・
こ、これをあたしにどうしろと???
「あのねぇ、あそこの
山口さんところに届けてほしいの」
や、山口さん???
と、届ける?? たくあん?? とどける???
指差すほうを見ると、反対の通路のはてしなく向こうで、
山口さんと思われる方が
ニコニコこちらを向いて両手を振っていた
仕方なく届けると、「みんなー来たわよー」と前後左右に報告。
それから持参した爪楊枝で たくあんパーティーが始まった。
先輩がたくあん臭いと眉間にシワだったよ~ お願いだからほどほどにしてね。
ワイワイ がやがや
ここはどこかの居酒屋か???
それもまた ひと段落すると、今度は一斉に お手洗い
そして 必ず鍵を閉めない (←中高年に驚かないための攻略ポイントその1)
私は何度もドアを開けてご対面してしまったことがある
だってノックしても ノック返しも、「はいってま~す」とも返事がないんだもん。
これももう見飽きた。
それから、なぜか流さない(←中高年に驚かないための攻略ポイントその2)
ボットンとでも思ってるのかな。どんな古い飛行機でも流れますから・・・。
約5年間、色んなモノを見てきた・・・・。
それからベルトサインが点灯し、
着陸するまでの間に、さっきの元気はどこへやら、うとうとしだす。
でも到着したら 充電完了!元気いっぱい。
「どうも ありがとぉ~」「お世話になりました~」
・・・・・嵐が去ってゆく
嵐が去っていったあと、枝とか葉っぱ
とか、イロイロ道に落ちてるでしょ?
あれと一緒で、帽子やめがねの忘れ物、たまにリュックとか。
(どうやったら忘れられるのかな)
それから、おかきの残骸、爪楊枝、イロイロ落ちてます。
たまにシートポケットに入れ歯がっ・・・・・
ってか、なんでナマでシートポケットに入れてるのよ~~
泣きそうになりながら、なんとかつまみ出し、
忘れ物として、グランドスタッフに届けます。
気付いたら、身も心もボロボロ
「あと2便、持つかね・・・」
背中を丸めながら、ギャレーで先輩とコーヒーをすする。
愛想のない「日経」「日経」しか言わない、サラリーマンに比べれば
楽しいし、おもしろいっちゃぁおもしろい。
でも朝からは ちょっと・・・キツいっす。そのテンション。
以上、優雅なサービスとは ほど遠い、
客室乗務員の過酷な現場レポートでした。
これを攻略できれば、プロといえます。