国交省が、トラック運賃適正化の動きに乗り出したとのニュースが出た。具体的には、運賃の規定である「トラック運送約款」を改正し、運賃はあくまで「運送料」であり、それ以外に「待機時間料」や「積み込み料」を料金メニューに含められるようにすると言う。

パッと見の印象としては、非常に違和感のある改正である。なぜなら、待機や積み込みも含めての運送であり、運ぶ作業の工程を細分化したに過ぎないからだ。他の業界で例えれば、飲食店に行って、調理費と食材費とサーブ料と片付け料を分けて示しますと言っているようなものだ。

どんぶり勘定を是正して、より細かく料金を決めるという意図があるようだが、運送業界で果たして効力があるかも疑問だ。結局、項目は並べるものの、まるっと合計いくら、という精算となるイメージが眼に浮かぶ。

例えば待機時間を考えると、運送事業者側にも責任が発生する。想定とは逆に、運送事業者側が待たせた場合には、荷主側に違約金を払うのかという話だ。

総じて、この施策によって、運賃が適正化されるとは全く思わない。双方の、特に料金体系を決める運送事業者側の負荷が増えるのみで、料金相場は全く変わらないと予想する。

国交省が主体となって開催予定の協議会や、約款に従わなかった場合に出すとされる業務改善命令も、ただの手間でしかない可能性がある。余程の広範囲かつ熱量の多い働きかけがないと、効力を持たせるのは難しいだろう。

ただ、批判は誰にでもできる。では、この、人手不足で、適正化されていない運賃をもっと実行力のあるやり方で変えていく方法はあるのか。それはやはり、今進んでいる大手による値上げ交渉しかないだろう。国交省も、これに乗じて何かできることを、と考えたと推察できるが、結果は余計な手間を増やしてしまったという印象である。