庭に関する記憶は、もう一つある。


子供の頃住んでいた町に、都営住宅っていうのかな、二階建ての長屋形式の建物が集まっているところがあった。


一人で近所に買い物に行った帰りなど、普通に表の道を歩いて帰ればいいのに、時々その敷地の中を通って帰ったりしていた。


ちょっと探検のような気持ちで。



その敷地の真ん中には中庭というか、広場のように少し開けた所があって、ちょっと荒れたような空間に、温室があった。


『元』温室、と言った方が良いかも、丁寧に何かが栽培されているわけでもなく、荒れた庭に設置されたそれは、ガラスも曇っているし、中の植物も荒れ果てた感じだったと思う。


だいたい、その敷地内で誰かに会った記憶はない。

多分、ちゃんと人は住んでいたんだと思うけれど、誰も出入りしていなかったというか、私が通る時間帯が誰とも被らなかっただけか…


ちょっと寂しい夕方など、ドキドキしながらそこを通って帰るのが、怖く、魅力的だった。



大きくなって、母にその話をすると、そんな住宅があったことは覚えているけれど、そんな中庭とか温室とか、あったかねぇ…ということだった。




例えばそんな中庭や温室、その記憶。

そんなものが私には大切な気がする。



他所の敷地なんだから、そんな所通っちゃダメよ、と言われているのに、どうしても通ってみたかった子供の頃の気持ち。


誰かに会って、こら‼️と怒られるんじゃないかという恐れの記憶。


寒い冬の夕方に、そっとそこを通った、なんとも言えない寂しさと罪悪感、そして高揚感…



そんな事を思い出すと、まぁ、ダメだと言われている事をやってしまう悪い子だった訳だけど、誰にも言わないちょっとした秘密だったり、自分だけの世界を持とうとしていたり…という、子供らしい、自分の世界を広げていこうとする頑張りがあったような気がするんだよね。


その建物群は、気がついた時には無くなっていて、今となっては本当にあったのかどうかもわからない。

でも、記憶の中には、あの、ちょっと後ろめたいような、自分だけが知っている秘密として残っている…




そんな秘密の引き出しを大切にしていく事って、小さなことだけど、自分自身の人生を生きていく上で大事なことだと思っている。


もちろん、家族やパートナーや、大事に思う人たちと共に生きているんだけど、自分の人生は自分一人しか生きられない訳で。



世の中の人、それぞれが自分だけの人生を頑張って生きていて、そんな、その人の人生を垣間見た時に、ふうん、そうなんだね、私もそうだよ、みたいな😌…



みんな自分の心の拠り所を胸の奥に秘めて、毎日を、上を向いて頑張っていこう✨と思うこの頃なんです。



自分の心の奥底の、秘密の庭を思い出したくなったら、こちらへ🌟