DVDの特典映像の中に、「火薬陰謀事件」の解説がある。何人かの専門家が語ってるんだけど、ガイ・フォークスはカトリックのクリスチャンで、当時はカトリックが弾圧されていた時代だったらしく、熱心なカトリック信者だったガイ・フォークスはそれに反抗する勢力に入っていたらしい。
彼らは、その年の議会の開会日1605年11月5日に、その地下で大量の火薬を爆発させて国王・議員らを爆殺する計画を立てた。火薬陰謀事件だ。
しかしこの計画は密告され、ガイ・フォークスは計画実行日に地下で待機中のところを見つかり捉えららてしまう。彼は火薬に点火する役目を任されていたのだ。
かくしてこの陰謀は失敗に終わったのだ。ガイ・フォークスは捉えられ、ひどい拷問を受け処刑された。国王の暗殺を目論んだのだから、重罪だ。
そして現在。
ガイ・フォークスナイト。
11月5日に、子供達は手製のガイ・フォークスの人形を持って通りを歩き、通行人らに"Penny for the Guy!" (ガイのために小銭を!)といってお金をもらう。人形は焚き火にくべて燃やし、貰ったお金で買った花火を上げてお祝いするのだ。
お祝いするんだ。
そう、この日は、「ガイ・フォークスの野郎の陰謀が失敗に終わって良かったね!国王が無事で良かったね!」とお祝いする日なのだそうです。ガイ・フォークスは悪者なのだから。
火にくべるのは、ガイ・フォークスを火炙りにしてやるという意味もありそうだな。なんだか血なまぐさいお祭りだなぁ。しかも子供がこれをやるなんてね。
(どこだか分かりませんが、ガイ・フォークスを英雄視する地方もあるのだとか?)
わたし、V FOR VENDETTAを何回も観ているのに、この特典映像を見るまで気付かなかったんだけど、
Vがラークヒルを爆破した夜、11月5日に、炎の中を歩み出てくるのは、このガイ・フォークスナイトの人形を燃やす行事と関係ありそう?毎年この夜にガイ・フォークス人形を炙る炎の中、それを物ともせず歩くV。
そして、Vがオールド・ベイリーと議事堂の爆発時に花火を仕掛けていたのも、このガイ・フォークスナイトの花火を意識してのことだったのかな?
VはVTVのスピーチの中で、"...a great citizen wished to embed the 5th of November forever in our memory" と、ガイ・フォークスのことを讃える言い方をするのだけど、ガイ・フォークスは先ほど書いたとおり、英雄ではなくて反逆者として認識されているのですよね、実際には。
だからか、「ガイは英雄なんかじゃない!この映画は間違ってる!」と主張する動画がYoutubeに上がってるのを見かけたことがある。
ただ、この原作者たちもそれくらいは分かっていたはずなのだ。アラン・ムーアもデヴィッド・ロイドもイギリス人なのだから。
原作graphic novel の最後のほうに、いかにしてV FOR VENDETTA は生まれたのか?どこから着想を得たのか?についてアラン・ムーアが語っているんだけど、その中にも出てくる。
Vにガイ・フォークスマスクを着けるのは、作画担当のデヴィッド・ロイドからのアイデアだったらしい。
「毎年11月5日にあいつの人形を燃やすだけじゃなくて、議事堂を吹っ飛ばそうとしたあの度胸を褒め称えてやろうじゃないか!」
これは最高のアイデアだ!ということで、Vはあのような出で立ちになったのだそうですよ~。
Vはただのヒーローじゃない。単純な勧善懲悪ヒーローじゃないのだ。
V自身も、自分の行いを正しいと考えてはいても、英雄視まではしていなかったと思う。国民に崇めてもらいたいなんて別に思ってないはずだし。
Vは、英国国民に馴染み深いガイ・フォークスナイトを逆手に取って、政府に従順に従うだけの国民に、その反逆精神を思い出せと訴えようとしたのでしょう。間違ってると分かっているのに、何もしないでいること・無関心でいることこそが、Vにとっては罪なのですよね。
Vが11月5日にラークヒルを爆破したのは偶然だったんでしょうかね?それとも初めからその日を狙って爆破したのでしょうか?
まあ、V本人が「偶然は信じない」と言っていますから、すべては計画通りだったのでしょうかね。
ガイ・フォークスは口髭とヤギ髭のある男で、ガイ・フォークスマスクはもともとイギリスにあったものなんでしょうが、この映画によって広く知られるようになったのですよね。それを思うと、ハッカー集団やデモ参加者がこのマスクを着けているのを見ると、Vの思想が思わぬ形で世界中に引き継がれているんだな?と思われて感慨深いのです。
彼らが、単なる覆面としてではなく、古い体制や弾圧に反抗する意思を示すためにあのマスクを着けているのだとしたら… 凄いことではないですか?特段大きな興業成績を残したわけではない(と思う)映画なのに。
やはりこの映画はスゴイぞ!と思うわけです。
Remember, remember,
the 5th of November,
the gunpowder treason and plot,
I know of reason why the gunpowder treason should ever be forgot.
もうすぐ11月5日ですよ!