去る12月11日(日)、上智大学教授・大塚晃先生の講義に参加した。

大塚先生は、厚生労働省の役人としての経験、また社会福祉事業での実際の就業経験もある方で、現在及び将来の日本の療育制度の策定に関与され、「発達障害の子どもの幸せのことを真面目に考える熱い思い」がひしひしと伝わる方だった。

 

さて、その大塚先生の講義で最も印象深かったのは、

「各療育センターは半年をめどに子どもを押し出すように努力しなければならない」

という言葉である。

私が所属するセンターでは、いわゆる「境界線児」とされる子どもさんが多いのだが、来所された後、1年以内にセンターを修了されるケースはほとんどない。(というか、年少からセンターに来られた方でも、また個別療育を受けても普通級へ入学される方は皆無)

大塚先生によると

「これが問題のひとつ」

だということである。

各事業所とも、本気で療育を行い、普通の幼稚園・保育園、小学校へ押し出していく、そして社会・地域の中で生活できるようにしていくことが何よりも大切だということである。

 

また、それに際して、例えばアメリカでは、療育も通常の学校教育も文部科学省管轄で行われているのであるが、日本の場合は幼稚園・小学校・支援学校は文部省管轄であっても、療育センターは厚生労働省の管轄になる。つまり適用される法律も異なり、子どもの教育を行うのに協力体制をとることが難しいし、そればかりか、厚生労働省管轄では

「子どもの権利としての教育」

「子どもの未来を見据えた教育」

という事ではなく、

「親支援のためのお預かり」

の要素が色濃くなってくるように思う。

 

さらに厚生労働省管轄のためか、職員も授業の進め方、授業プランの立て方を知らない人も多く、

「公的支援を得るにはこうしたら良い」

という、手帳の取り方、給付の利用法だけの説明だけが詳細で、子どもを半年で療育センターから押し出すというよりも、そこに定着させる事が主眼になっているようにも思う。

 

療育センターにすがるような気持ちで扉を叩く親子に対して、厚生労働省管轄の制度では

「理念自体に無理がある」

と言わざるを得ない状況なのである。

(重度心身障害については医師との連携など厚生労働省管轄下という事にも意味もあると感じるが)

 

子どもの療育を格安で受けるには発達支援センターのような公的施設を利用するのが望ましいのかもしれないが、まずはセンター、あるいは先生を見定める時には

「本気で子どもの将来を考えて、各個人個人にふさわしい教育を行おうとしている所かどうか」

という視点は重要だ。そして

「個別支援計画」(保護者全員が受け取ることになる)

にワクワクする文言がつまっているかどうかがポイントだと、大塚先生は教えてくれた。

この計画書の中に、思いやりがつまっていれば、読んでいるとワクワクする!!そうだ。