ホメオパシー療法の使い方、また発達障害に関わる諸所の問題において周囲でよく聞かれるのは

「とりすぎ」

という現象である。

 

例えばホメオパシーにおいては、レメディと呼ばれる薬には原理原則的な使い方があり、さらにそのレメディの薬効を妨げるような物質摂取の制限、日々の生活態度への戒めについて、創始者サミュエル・ハーネマンは自著で詳細に記している。けれど、現在日本で流布されている各種ホメオパシー(風な)講座を受講された方は、

「レメディをとりさえすれば問題は全て解決する」

と聞かされ

「レメディの効果がない場合は、さらにレメディを増量したり、強めたり、あるいはもっと深い部分に作用するレメディをとるべし」

と信じこまされているケースが多い。

 

発達障害に関わることについても同じで、

「脳の一部に機能障害が起きているので、それをコントロールするために薬をとる必要がある」

と言われる方もおられるようだし、我が子の身体の弱さを案じる保護者の多くは、ちょっと鼻水が出かかっただけでも

「早期治療!一刻も早く病院へ行き抗生剤をもらわないと」

と思われる方も多い。

特にインフルエンザ流行前には、パニックになるほど泣き叫び嫌がる子を引きずり、予防接種のために病院を訪れる親も多い。

 

私がこれらの場面で痛感するのは

「問題を引き起こしている原因となるものを生活から引き算してみる」

ということの難しさである。

そしてこの「生活からの引き算」に果敢にチャレンジしたのが、以前にも紹介したアメリカ人キャリン・セルーシである。

キャリン・セルーシは自閉症スペクトラムと診断された子どものために、

「いつ以来」

そうなったのかを緻密に検証し、生活から原因物質になりそうなものを引き算した。そしてその結果、ついには

「自閉症スペクトラムとは決して言えない」

という診断をとるまでにに辿り着いた。

 

日常的に常用していた物質を生活から引くことは、「愛着ある生活と決別する」という意味において非常に難しい。けれど往々にして、その人にとって

「最も自分の生活に欠かせない物質」

と思ってしがみついている物こそが、その人の問題の原因物質である場合もある。

「タバコなくしては私の人生はありえない」

「スマホがなければ生きていけない」

「甘い物を食べない日常なんて考えられない」

という場合などである。

 

食生活、薬の取り方、医療の利用の仕方などは、とにかくシンプルが望ましい。そしてそのために、

「偏見のない眼力」「深い眼力」

も必要になる。