僕らの夏休み | Remark Spirits オフィシャルブログ「RS style」 Powered by アメブロ

僕らの夏休み

これは高校2年生の夏休みに、ラグビー部の同級生15人ぐらいと三日間の盆休みに、日帰りで海に出掛けた時の話しです。

彼(あえて名は伏せます)は、愛くるしい顔が印象的なぽっちゃり体系の色白でした。

優しくて真面目な性格の彼は、ウエイトトレーニングが大好きで、プロテインを牛乳に混ぜて飲んでいる皆の横で、嬉しそうにバナナ味を飲んでいたのが印象的でした。

「ばり、だくるわ。」 
(汗をすごくかいている。)という意味らしいです。

これが夏でも冬でもタオルを手放さない彼の口癖でした。

初めてラグビー部で遊びに来た事もあり、テンションは天井知らずに上がりっ放し、正直全員調子に乗っていました。

海の家も開いていない朝から到着していた僕達は、元気一杯に日光を全身で受け止めました。

時刻も昼を過ぎ、ビーチバレーや無意味な全力疾走、海辺のカップルへのいたずらにも飽きて来た頃、誰かが叫んだのです。

「ナンパしようぜ!!」

ついにきたか!!

「うん、、そうやな。やっぱナンパやな。」

「じゃあ、分かれて勝負しようや!あんまり人数多かったら上手くいかんで?」

口々にそう言う皆の顔にも、緊張を隠せずこわばった表情が浮かんでいました。



“負けられない戦いがそこにある”



それからの数分間は、“俺は初めてじゃないぜ”とでもアピールするかのように、雑誌や人から聞いた知ってる限りの知識をお互いに披露しあいました。

「じゃあ、そろそろ行こうか。」

出来たグループは3つ

“普段から学校で女の子達と仲の良いグループ“

“基本男で騒いでいるが喋る事は喋るグループ“

“そのどちらでもない”



色白の彼は残念ながら

“そのどちらでもない”グループでした。



青春とは甘酸っぱくも残酷でした。

人間は保身に走るのです。少しでも、、1%でもナンパ成功の可能性を引き上げたかったんです。

少数精鋭のグループに入り込んだ俺がチラッと見ると、彼の目の奥には絶望の二文字が浮かんでいました。

そうタイムリミットは二時間、厳しい罰ゲームが彼には待っているのです。

結局、、上手く行く訳も無く、、

判断基準は女の子と何分話したか。どれだけ仲良くなれたかが勝負を左右しました。

自己申告制であったので審査は難航し、最終的には力づくでした。

高校生なんてまだまだ子供、フェアじゃありません。



さあ、彼には限度を知らない“運動部の高校生が考える稚拙な罰ゲーム”が待っています。

彼にとっては“ちょっと美味しいかも”なんて考えがあったのかも知れません。

「ちょっと、勘弁してや!」等と言いながら積極的に受け入れてくれました。


注目の罰ゲーム発表

“浜辺に埋めて置き去り”



シンプルながら笑えました。

毎日体を鍛え、深く穴を掘るだけの腕力は十分にある男達です。

けっして遠慮はしません。

彼と数名をしっかり穴に埋めると、すぐさま帰り支度を始めました。
疲れていた僕達は、何か叫んでいる彼の声を笑わずに最後まで無視する事に成功しました。

「じゃあ、お疲れ!!」

そう言って引き上げる仲間を見て彼はこう思った事でしょう。




“まさか本気?”



そう、あの頃の僕達は全てに本気なんです。

身の危険を察したのか体をモゾモゾさせています。

なんとか抜け出そうともがいています。

それは無駄な努力でした。

疲れ果てた姿で穴に埋められている彼をみると、なぜかせつなく優しい気持になり皆で助けてあげる事にしました。

夕暮れが皆の顔を赤く染めていました。そして真っ赤になった体をプルンと震わせて彼はこう言いました。

「明日練習やろ。このまま置いてかれたらやばかったわ。」

少し怯えた目は真剣でした。


「本気なわけないやん、、分かるやん。」

彼と目を合わせずにそう言ったのを覚えています。

僕らは夏の海にサヨナラを告げ、電車に乗り込みました。

「明日練習しんどいやろなあ?」

「絶対しんどいで、、遅刻だけはやばいな。」

「頑張ろうや!」

お互いを励まし合いながら家路に着き、その夜はベッドに倒れ込む様に眠りにつきました。

次の日、朝から重い体をひきずりながら皆がグラウンドに集ってきました。

「全員来てる?」

「いや、一人おらんで。」

「あいつきてないやん。」

そう、一人グラウンドに現れなかったのは色白の彼です。

練習が始まる前にマネージャーが監督に報告していました。



「監督、○○君昨日海で日に焼け過ぎて全身火傷みたいになってるらしくて休ませて欲しいとの事です。」

それから彼は三日間練習を休みました。


嗚呼、素晴らしき青春


終り