両親に話す。

そう決めて、
実家に向かった。

そう決めてからずっと、
どう話そうか、
頭の中で何度も
シミュレーションを
繰り返した。


実家に着くと
いつも通り迎えてくれる両親。


顔を見ると
決意が揺らいだ。


今から話そうとしてること、
このことを話すのは
親不孝なんじゃないか。

親と過ごせるのも
そう長くはないかもしれない。

それなのに
こんな話をするのは
ただ
辛い気持ちにさせるだけなんじゃないか。


どうしよう。
でも知って欲しい。

一緒に過ごせる時間が
長くないのだとしたら、
なおさら
今話さないと後悔し続けるかもしれない。

でも
話したいというのは
とても自分勝手なことなんだろう。

話したときの反応が怖い。


そんなことを考えて
言い出せなくて
時間は過ぎていった。


今住んでいるところから
実家までは少し距離がある。

次来られるのは
いつになるかわからない。

「聞いて欲しいことがある」
そう言い出せたのは
帰りの時間まで
あと1時間ほどになった頃だった。

しかも、父は席を外していたとき。

本当は
父にも当事者意識を持ってほしくて
両親のいるときに
と考えていた。

だけどどうしても父に
直接は話せなかった。


その時点で
考えていた状況ではなく、


冷静に
伝えたいことを
漏らさず伝えられるようにと、

頭の中で
シミュレーションしたことは
まるで意味を成さず。

中1の頃と同じように

泣きながら話した。

兄からされたこと

その期間

今まで考えていたこと

今の気持ち。


母は泣きながら

最後まで聞いてくれた。

『気づいてあげられなくてごめん』

『バカ息子がごめん』

この人にとっては
どんなだろうが息子なんだよな
と思ったら
胸が少し痛んだ。


それ以外にも
思うことはいろいろあったけど

最後まで聞いてくれて

涙を流して悔やんでくれた。

もう十分かもなと思った。

「嫌な話をしてごめん」
「でも聞いて欲しかった」



あの頃のこと
母が覚えてることも話してくれた。

中1の時に私から話を聞いて、
母からも
父からも
それぞれ兄に話をしてくれたと。

だけどそこでも兄は
なんのこと?
俺は何もしてないよ
という態度だったという。

それを聞いたとき
また胸の底の方が
ぐっと重くなるのを感じた。

そうか。
あの人は認めなかったんだ。

自分がしたことを
認めて
悔いたこと
ないんだな。



だから
両親も
半信半疑だったのかもしれない。

自分の息子が
と思うと
信じたくない気持ちもあっただろう。



ああ、そうか。
本人は
認めてない。
悔いてもない。

そりゃ許せるわけないや。

だって
謝られたことだって
もちろんない。

このまま
自分がしたことを
認めず
悔いず
気がつかず
死ねばいい。
このまま
死ぬまで
そのままで
それで
地獄に落ちればいいのに。

そんなことしか思えなかった。

その日の夜。

夢を見た。

両親に話したことを
兄に知られて、
激昂した兄に
殺される夢。


そんな不安もあったんだ
って起きて気づいた。

やけにリアルで
あの人の存在が
不安で
恐怖の対象であることは
変わりなく
続いていく。