伸びゆかない根が這った地の硬さを
手の届かない引力のせいにして
空へと腕を広げることも止めてしまった



愚かなことだと
心だけは知っていた



けれど
逃げることと
知らんふりすることも
心だけでわかっていたから

赴くまま 静かな湖に
そうっと沈めた

順番に、一つずつ




氷と雪が軽やかに重く蓋をして
冷えた湖には鍵がかかった




繊細な錠前は
柔らかな一瞬の日差しにも
溶けかけて



見たくないものが

思い出したくないことが

曖昧な形になって

浮かんでくる



鮮度も彩度も失い
名前もなくなった想いが
夢のなか、手を繋ごうと
走り寄る

それは
欠片も邪気の無い笑顔で。













恐ろしいのは

真実ではなくて

パンドラボックスの

中身でもなくて




切り離して沈めたまま
何事もなかったかのように
温もりばかりを手繰り
冬の手前で足踏みをし続けようとする

蛹で居たい心の方だ