私が一緒に学習している子どもたちに頻繁に言っているのは、
「スマートフォンに気をつけろ」ということです。
スマートフォンは確かに便利な道具であるけれど、使い方を誤ると人生を狂わせるものです。
一緒に学習をしている子で、朝起きられないとか、夜寝れないとか、
イライラしやすいとか、すぐに何かを忘れてしまうとか、
そういう症状を訴えるケースがあります。
すべてがそうと言い切るつもりはありませんが、
かなりの割合で私はスマホ使用が関与していると考えています。
しかし、私みたいなド素人がいくらそんなことを言っても何の説得力も持たないので、
今回はスマホ使用にまつわるある研究をご紹介したいと思います。
以下にご紹介するのは、東北大学医学部の川島隆太教授のグループが行った研究です。
仙台市内在住の小5~中3のスマホを持つ子どもたち36326人を、
スマホ使用1時間未満、スマホ使用1時間以上の2群に分けて学力検査を実施しました。
その際に普段の睡眠時間および学習時間についても聞き取り調査を行いました。
川島教授は著書「スマホが学力を破壊する」の中でこの調査の結果について以下のように記しています。
"スマホを1時間以上使う児童・生徒は睡眠時間をきっちり確保し、かつ毎日しっかり勉強しないと平均点に届かないのに対し、
スマホ使用を1時間未満で抑えることが出来ている児童・生徒は、とりあえず毎日机に向かう習慣がありさえすれば、
あとは極端な睡眠不足でもなければ、平均点がとれることがわかります。"
著書に掲載されている調査結果のグラフを見る限り、極端な睡眠不足のケースを除けば、こういう表現もできます。
「同程度の睡眠時間、学習時間で2群を比較すると、スマホ使用1時間以上の群がスマホ使用1時間未満の群より明らかに成績が悪い。」
私がこの結果が怖いと思うのは、
スマホをたくさん触っていて学習時間が少なくなったから学力検査の成績が悪くなった、
というわけではない、ということです。
同程度に睡眠をとり、同程度に学習していたにも関わらず、
スマホ使用時間の長い群は短い群に比べて成績が悪いわけですから、
その結果を、学習時間の多少に帰することはできません。
この結果が示唆するのは、スマホの長時間使用が、脳の構造自体に物理的な影響を与えているということです。
ただここで注意しなければいけないことがあります。
それは、相関関係と因果関係は違う、ということです。
事象Aと事象Bが伴って起きた、という事実が、
事象Aが事象Bの原因であることを、
または事象Bが事象Aの原因であることを、
必ずしも担保するわけではありません。
例えば私がくしゃみをしたときに、近くを走っていた自転車が転倒したとします。
この時、くしゃみに驚きハンドル操作を誤り転倒した可能性も考えられますが、
路面の一部が凍結していてそこで滑って転倒した可能性も考えられます。
つまり、私のくしゃみが原因で転倒したとは言い切れない訳です。
これが、相関関係と因果関係は違う、ということです。
スマホ使用の多少が、子どもの学力差の原因なのかどうか。
これを結論づけるためにはさらなる調査が必要で、
その結果についても引き続きご紹介していくのですが、
長くなりましたので、次回に続きます。