前回のブログでは、人間がある行動するか否かを決めている、行動曲線についてご紹介しました。
行動曲線の上側の領域にある行動は、やる気と能力が十分に高いため、きっかけを与えれば人はそれを行動に移します。
一方で、行動曲線の下側の領域にある行動は、やる気と能力が十分に高くないため、きっかけを与えても人はそれを行動に移すことはありません。
行動領域の上側にある行動の例としては、スマホやゲームなどの、本人がやってみたいと思っていて、その行動のための能力が高いものが挙げられます。
行動曲線の下側にある行動の例としては、学習やダイエットなどの、本人があまりやってみたいと思っておらず、その行動のための能力が低いものが挙げられます。
行動曲線の下側にある行動を、行動曲線の上側へ移行することを考えたとき、人は往々にしてやる気を出すことを考えがちですが、
人のやる気というものは、その日の気分に大きく左右されるため、ある行動が継続された状態である習慣を形成するときに、第一に依拠するものではないのです。
それでは、如何にして行動曲線の下側にある行動を上側に移行させ、継続的に実行できる状態を実現すればよいのでしょうか?
行動曲線の縦軸であるやる気に訴えるのではなく、行動曲線の横軸である能力を調整するというのが、その方法です。
つまりある行動に対する能力を上げる、ということです。
図示すると、以下のようになります。
それでは行動に対する能力の上げ方には、どのような方法があるでしょうか?
行動に対する能力の上げ方には、以下の3つがあります。
1、行動に習熟する
2,行動を容易くする道具を使う
3、行動自体を実行しやすいものに変える
まず1について。
ある行動を遂行するための能力を上げるには、その行動に習熟すれば良いわけです。
例えば、腕立て伏せ30回という行動を遂行する能力を上げたければ、
実際に腕立て伏せ30回を何度も何度も行えば、自然とその遂行能力は上昇していきます。
しかし、その腕立て伏せ30回という行動を取り続けること自体が困難であるため、
このアプローチは途中で挫折する可能性が非常に大きくなります。
私自身、何度もこの失敗を繰り返してきました。
次は2について。
例えば毎朝6時に起床する、という行動を取りたい場合、
それを容易にする目覚まし時計という道具を手に入れ、寝る前に枕元にセットすれば、
行動に対する遂行能力が上がるため、実際に6時に起きるという行動を取りやすくなります。
また、30分のジョギングを習慣づけたいのだけれど、走っている最中に足が痛くなって走り続けられなくなるならば、
スポーツ用品店に行って、自分の足に合う靴を手に入れれば、行動に対する遂行力が上がるため、行動を起こしやすくなります。
上記のように、道具を介してその行動に対する遂行力を上げる、というのが2番のアプローチです。
最後に3について。
これは、行動に対する能力を上げるのではなく、行動自体を行いやすいものにダウンサイズすることで、
相対的に行動に対する能力を上げ、実行しやすくする、というアプローチです。
例えば、毎日日記をつけるという行動を習慣化したい場合であれば、
ノートを開いて毎日毎日1000字以上綴ること、などという壮大な目標を立ててしまうと、
行動に対する能力は十分高くないため、最初の数日はやる気を出して続けることができても、
そのやる気が尽きてしまえば、もう日記を書くという行動を取らなくなってしまいます。
しかし、実行に移したい行動を現在の自分の能力に見合ったものに変更すれば、
行動曲線の横軸の値が上昇するため、その行動を実行しやすくなり、習慣化しやすくなるわけです。
先述した日記の例で言えば、まず毎日3行くらい書くところから始めるとか、
それでも困難な場合は、毎日日記帳を開くところから始めるとか、
行動自体を現状の能力に見合ったものに変更するというのが、3のアプローチです。
行動に対する能力のあげ方を3パターン見てきましたが、
習慣形成を考えたときに、採用すべきは2と3のアプローチだというこうとが分かります。
ご自身が習慣づけたい行動に対してこれら2つの方法を実施し、行動することに対するハードルを下げたならば、
今までよりも格段にその行動を取ることが簡単になるはずです。
それでは、その行動を持続して、習慣にするために何が必要なのでしょうか?
それは人が依存症に陥る仕組みを逆手に取る、というものです。
長くなりましたので、また次回。