学校教育は決して洗脳などではなく
子どもたちの世界観を広げてくれる素晴らしい内容
それでは学校教育を通して得られるものとは?
そんな内容でここ数回ブログを綴っております
国語を学ぶことで得られるもの
英語(他言語)を学ぶことで得られるもの
歴史を学ぶことで得られるもの
と私の考えを紹介して参りました
今回は数学、理科
二つまとめて表現すれば
科学を学ぶことで得られるものとは?
そんな内容を綴ってゆきます
=「こんなこと勉強してなんか意味あるんですか?」=
子どもたちと学んでいると度々そう言われることがありますが
特に言われる頻度が高いと感じるのが、数学、理科かもしれません
「三角比?」
「微分積分?」
「四則演算できれば良いでしょ!」
「酸化還元?」
「電磁誘導?」
「これ何に使うんですか?」
表面的なことにばかり目を奪われると
個別の知識は役に立たないように見えるのかもしれません
三角比、微分積分、酸化還元、電磁気
それらを学ぶことによって得られるもの
個別の知識はもちろんですが
もっと汎用的なものが得られます
それが論理的思考力です
論理的思考方法には代表的なものとして
演繹法、帰納法のふたつがあります
=演繹法=
論理的思考法の一つに演繹法があります
広く認められているルールと目の前で観察される事柄からある結論を導き出す
それが演繹法という考え方です
例えば二つの三角形がぴったりと重なるにはどういう条件が必要か
これは三角形の合同条件と言って、中学二年生の数学で学ぶ内容です
1、三辺がそれぞれ等しい
2、一辺と両端の角がそれぞれ等しい
3、二辺とその間の角がそれぞれ等しい
三角形の合同条件は広く認められているルールです
さて、今目の前に二つの三角形、三角形ABCと三角形DEFがあるとします
そしてその二つの三角形について三辺の長さをそれぞれ測ってみると
対応する辺の長さがそれぞれに等しいことがわかりました
これは目の前で観察される事柄です
三角形の合同条件と目の前の観察事項から
三角形ABCと三角形DEFは合同、つまりぴったりと重なり合う
という結論が導き出せます
今の話の流れを再確認すれば
三角形の合同条件(ルール)+三角形ABCと三角形DEFの三辺がそれぞれ等しい(観察事項)→三角形ABCと三角形DEFは合同(結論)
つまり演繹法の思考をしていることが分かります
この例のように演繹法は数学の証明問題などで度々用いられる思考法です
=帰納法=
目の前で観察される複数の事柄から共通項を見出しそれを元に仮説を立てる
この思考方法を帰納法と言います
18世紀、オーストリアの司祭、グレゴール・メンデルは
黄色のエンドウマメと緑色のエンドウマメ
これら二つを交配すると一体何色になるのか?
そんな実験を行っていました
実験の結果、すべてが黄色になりました
この結果をうけてメンデルは
エンドウマメの色を決める遺伝子には
マメを黄色にするものと緑にするものの二種類があり
その特徴の現れ易さには優劣関係がある、という新たな仮説を立てました
これは現在、遺伝法則の一つである優勢の法則として知られています
この話の思考方法は
黄色と緑のエンドウマメを交配するとすべてが黄色のエンドウマメになる
という観察される事実から
ある遺伝形質(今の例では色)を決める遺伝子が複数ある場合、それらには発現のしやすさに優劣がある
という新たなルールを導き出していて、帰納法の型になっていることが分かります
このように帰納法とは、理科の分野でよく用いられる論理的思考方法なのです
=論理的思考力=
上で見てきたように
私たちは数学、理科で教わる内容を通じて
知らず知らずのうちに論理的思考の訓練をしていることが分かります
論理的思考力が必要なのは何も数学や理科の分野にとどまりません
例えば社会人になって人前でプレゼンするときなど
演繹法や帰納法を使って、話を筋道立てて進めていくことができれば
自分のプロジェクトに周りから共感や協力を得られやすくなるでしょう
また誰かの話に耳を傾けるとき
その話の流れが演繹法や帰納法の型としておかしくないか
論理的瑕疵がないかどうかを判別できれば
悪い人間が持ち掛けてくる、悪い話に騙されることもなくなるでしょう
このように
数学や理科を学ぶことを通じて得られる論理的思考力とは
決して数学や理科の範囲に留まるものではなく
私たちの生活に広く深く根差したとても汎用的な能力であることが分かります
三角関数、微分積分など、取り扱う個別の事柄は
もしかしたら大人になって使わない人もいるかもしれません
ただそれらの事柄を学ぶ過程で身に着ける
論理的思考力を必要としない人はまずいないと言っていいでしょう
私が考える、数学・理科を学ぶ意味
それはこのようなとても汎用的な力
論理的思考力を鍛え、社会のなかで役立てていくためです