全く、世の中も腐ったものだ。
古来より日本では、料理洗濯に至るまで、雑事は下卑たものとされてきた。
諸君らも古典で学んだであろう。
惚れている女の飯を盛る場面を見て、男が興醒めしたという話を。
料理とは昔から、下々の使用人が作るものであった。
そして時代が進むと、男尊女卑の思想が生まれ、「男子厨房に入らず」という言葉が生じたのである。
それが現代では、なぜ男共は嬉々として厨房に立っているのか。
今日はホワイトデー、というやつである。
女子からの“心のこもった”チヨコを貰ったバレンタインデー。
月日は早いもので、もう彼女らにお返ししなければならない。
そう、三倍返しで。
以前、「三倍返し」とやらをクリアするには真心を金額換算しなければならない、という旨の記事を書いた。
が、世間には小利口な者も多く、私がせっかく問題提起してやったというのに、
「こちらも真心で返せばいい」と反論し出す輩が現れ始めた。
どんな出来が悪くても、どんな失敗でも、
例え砂糖と塩、チョコと醤油を間違えても、
「マゴコロコメテ」という魔法で解決できる。
嗚呼、真心万歳。
そのような甘ったれた男どもは、手当たり次第に料理本を漁り、「クックパッド」なるものを検索し、
企業の策略とも知らず、お菓子コーナーに駈けこむのである。
自らの体に流れる熱く滾った誇り高き大和魂をためらいもなく投げ捨てる。
男が料理をする、ということの重大さを彼らは理解しえない。
人はえてして己の罪深さを自覚できないものだ。
それが人の愚かさであり、弱さでもある。
という訳でいま、私は嬉々として厨房に立っている。日本男児失格である。
チョコの甘さに目が眩み、重曹の苦さに涙ぐみ、
粉ふるいを水洗いした自分を罵倒する。
始終あたふたしながらホイッパーを握る自分はなんと滑稽であろうか、撮影しておけばよかった。
難儀しつつも作り終えた時には腰が悲鳴を上げていた。あ、いや、比喩的な意味である。
完成品がこちらである。
炭酸カルシウムによって発生した気体は生地を軽々と持ち上げ、その作用で焼きあがった彼らは雲仙普賢岳と見分けがつかないほどになった。
…それ以上言うな。分かってる。私は手先が器用でないしお菓子作りも慣れていない。
か弱き青少年の心を折って何が楽しいっ!?
…
申し訳ない、取り乱した。私としたことが。
さて、最後のまとめに入ろうか。
男女共同参画社会、万歳。

