リリーフ法律事務所のブログ

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法律は何でもそうですが、要件を満たす事実があれば、一定の手続きを経て、効果が発生します。

特に、刑罰を科す法律においては、要件を満たすのかが厳格に吟味されます。刑罰は最も重い人権の制限(はく奪)であり、歴史上も刑罰を使った人権侵害が繰り返されてきたからです。

法律の要件を満たさない行為は、いくら「悪い」と評価される行為であっても、処罰されません。刑罰が科されるのは、「悪い」行為のうちの一部に過ぎません。(例えば、不倫はそれ自体では処罰の対象ではありません。)

 

これに関連して、よく話題になるのが、危険運転致死傷罪(自動車運転処罰法2条)です。これも、法律には「危険な運転」というような、あいまいな規定は置かれていません。あくまで、2条各号に当てはまる行為が要件です。

ところが、ここから「こぼれた」行為を処罰する規定が、格段に罪の軽い過失運転致死傷罪(5条)となるため、危険運転致死傷罪を適用すべきという世論が高まることがあります。

しかし、これは罪名のトリックの部分が多分にあります。危険運転・過失運転という罪名のせいで、過失運転が「危険」でないかのような印象を与えてしまうのです。また、「危険な運転」であれば、危険運転になるという誤解も生じます。

つまり、危険運転致死傷罪は、その規定上、そもそもが「危険な運転」のうちの一部のみを拾って処罰する罪であり、「危険な」過失運転というものがどうしても残ってしまうのです。

 

個々の事件にコメントする趣旨ではありませんし、現行法の妥当性は分かりませんが、一般論として、法律もなしに世論だけで人を(重く)処罰することとなれば、それは規模を大きくした「私刑」(リンチ)にほかなりません。それが、自由の重大な制約・侵害になることは、歴史の示してきたところです。(重い)処罰が妥当であるならば、先に立法(又は法改正)をすべきなのです。