『各栄養素はどのように身体に吸収されますか。』(2)
 
 
<脂肪>

 ヒトはソーセージ、牛乳、卵、ナッツ、バター、油などから脂肪を摂取します。
 
これらの脂肪成分の約90%はトリグリセリド(中性脂肪)であり、残りの10%は、リン脂質、コレステロール、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)です。
 
 
 脂肪は、十二指腸に達するまで殆ど消化されません。
 
本格的な脂肪の消化は、小腸において、食物粥が胆汁や膵液と混合された後に行われます。
 
まず胆汁と混じり合い、胆汁酸によって脂肪の表面張力を下げて乳化(ミセルを形成)され、リパーゼの作用を受けやすくなります。
 
これは消化しやすくするための準備段階です。
 
その後、膵液と小腸液中の脂肪消化酵素(リパーゼ)によってトリグリセリドは、グリセリンやモノグリセリドになり、脂肪酸が切り離されます。
 
さらに一部のコレステロール脂肪酸結合が切断され、また膵臓の酵素(ホスホリパーゼ)によってリン脂質が分解されます。(管内消化)
 
(リパーゼは脂質を構成するエステル結合を加水分解する酵素群です。)
 
脂肪消化に最重要なのが膵リパーゼで腸液内のリパーゼはごく少量です。
 

 次にモノグリセリド、脂肪酸、コレステロール、リン脂質、脂溶性のビタミン類は、さらに胆汁酸の作用によって吸収されやすい水溶性の球形集合体の小粒子状のミセルを形成します。
 
ミセルになって初めて脂肪は小腸粘膜との有効な接触が可能となり、微絨毛の間に入り込むことができます。
 
上皮細胞の表面でミセルから遊離したモノグリセリドや脂肪酸などは細胞膜を通過して上皮細胞内に入る(膜消化)脂肪の吸収は、十二指腸と空腸の最初の部分で行われます。
 
 
 短~中間長の脂肪酸鎖は拡散によって腸絨毛の中の毛細血管に移動し、門脈を経て肝臓に運ばれます。(炭素原子が12個以下のもの)
 

 長鎖脂肪酸とモノグリセリド、そして管内消化で吸収されたグリセリンは上皮細胞内でトリグリセリドに再合成されます。
 
このトリグリセリド(中性脂肪)と他の大きな脂肪分子はタンパク質とコレステロール、からなるリポタンパクの膜で覆われたカイロミクロン(脂肪小球)となり、上皮細胞から腸絨毛の中のリンパ管に入ります。
 
これらのリンパ管は互いに合流して太くなり、最終的には胸管となって、肝臓を経ずに血液循環に合流する。
 
 
 
<ビタミン>

 ビタミンの吸収も小腸で行われます。
 

 脂溶性ビタミン(A・D・E・Kなど)はミセル内に包含され、脂肪の吸収とともに吸収されます。
 

 水溶性ビタミン(B₁・B₂・B₆・Cなど)は受動的な拡散によって速やかに吸収されます。
 

 抗貧血ビタミンのビタミンB₁₂は胃が分泌する内因子と結合し、回腸で吸収されます(この内因子がなければ吸収されません)。
 
 
 
<ミネラル>

 ミネラルは体の中では合成されないので毎日の食事からとる必要があります。
 
しかし、吸収されにくかったり、他の成分によって吸収を妨げられたりすることがあります。
 
また、体内に貯蔵できないものも多いのです。
 
一方ミネラルの吸収を助ける働きをするものもあり、カルシウムやリンはビタミンDによって、鉄はビタミンCによって吸収が高められます。

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに

参考文献