『肝臓とはどのようなものなのか、その働きを含めて説明してください。』(2)
 
 
<栄養素の貯蔵と加工(分解と合成)>
 

 肝臓は送られてきた栄養素を貯蔵型に変えて貯蔵したり、自分の体に適合した形に加工・再合成し、必要に応じて血行を介して全身に送り出します。
 

 栄養素をからだが利用しやすい形に分解・合成するはたらきを代謝といい、肝臓には次のような代謝機能があります。
 
 
 
・糖質代謝(炭水化物の貯蔵と加工)

血液中の過剰なブドウ糖をグリコーゲンの形に変えて貯蔵します。

血糖値が低い場合には、グリコーゲンをブドウ糖に変えて血液中に放出します。

他の単糖類である果糖やガラクトースも、肝臓に入るとすぐにブドウ糖に変えられ、同様に代謝されます。
 
 
・タンパク質代謝(タンパク質の加工)

タンパク質が消化されてアミノ酸として肝臓に送られると、これらのアミノ酸から生体に必要な形の様々なタンパク質が(その原料となるアミノ酸を含めて)再合成されます。(1日約50g)
 
 細胞生成の素材
 細胞が物質交代をするための酵素(タンパク質)
 ホルモン
 血漿タンパク質 など。
 
 
血漿タンパク質にはアルブミン。α-グロブリン、β-グロブリン、リポタンパク、血液の凝固に必要なフィブリノーゲン、プロトロンビンなどの凝固因子があります。

 (血漿タンパクの合成…アルブミン・グロブリンなど)
 (血液凝固因子の産生…フィブリノーゲン・プロトロンビン)

注)免疫グロブリンであるγ-グロブリンは形質細胞リンパB細胞でつくられます。
 
肝臓は小腸で吸収された必須アミノ酸から他のアミノ酸を生成します。

余分のタンパク質は脂肪に変えられて貯蔵組織に送られます。

役割を終えたタンパク質はアミノ酸に分解され、最終的に肝臓でアンモニアにまで分解され、尿素にして腎臓から排泄します。(尿素の合成)
 
 
 
・脂質の代謝(脂質の貯蔵と加工)

腸で吸収された脂肪はカイロミクロンの形でリンパ管に入り、静脈に合流し、心臓を経て血流にのり、肝臓に入ります。
 
大部分は末端組織に運搬され、エネルギーとして利用されるか、脂肪組織に蓄えられます。
 
肝臓でも中性脂肪の形で一部貯蔵されます。
 
必要に応じて遊離脂肪酸となって放出されます。
 
余分な糖やアミノ酸があるとそれらを脂肪に変え、貯蔵組織(皮下など)に送られてたくわえられます。
 
エネルギー源が減少すると、貯蔵脂肪が肝臓に運ばれて、分解されてエネルギー源(呼吸基質)になります。
 
肝臓では、脂肪酸の合成、分解のほか、コレステロールやリン脂質の合成が行われています。
 
また血液中の脂質はアポタンパクと結合し、リポタンパク質として血中に存在する(カイロミクロンもこの1つ)が、このリポタンパクも肝臓でつくられます。

コレステロールは細胞膜の重要な成分であり、ステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン、アンドロゲン、エストロゲン、黄体ホルモン)の原料であり、胆汁酸の原料でもあります。

肝臓に貯蔵される脂肪は肝臓重量の4~5%ですが10~30%になると脂肪肝と呼ばれます。
 
原因は肥満やアルコールの過剰摂取、糖尿病などです。
 
 
 
・ビタミン・ミネラルの貯蔵と加工

肝臓はある種のビタミン・ミネラルを貯蔵し、必要に応じて放出します。

ビタミンAを貯蔵します。

ビタミンDを水酸化します。(その後腎臓で活性化ビタミンDとなる)

赤血球を作るのに必要な鉄、ビタミンB₁₂を貯蔵します。

その他マンガン、亜鉛、モリブデンなども貯蔵されます。

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに

参考文献