白雲の うすくれなゐに 鬼やらひ

病む人に 看取りの人に 日脚伸ぶ

降り足らぬ やうに雪降る 二月かな

へだてなく 一樹一枝も 霧氷かな

霧氷林 うすうすと日の 在りどころ

坂下は 漆黒の海 多喜二の忌

虫出しの雷 観音の 薄まぶた

裸木となり ひと年の 影を置く

束の間の 入り日沖より 寒波来る

雪吊に 朝日差し入る 淑気かな

 

それぞれの 絵馬に日あたる 厄払い

老杉の はざまに雪の 大使像

桜の芽 つんと紅らむ 零下の日

赤げらの くるりくるりと 日脚伸ぶ

葬送の あをあをとある 寒の凪

土偶の口 ほうと小暗き 雪まつり

寒紅の ひとつぶ紅き 柩閉づ

煮凝りや 常磐木にある 鬱の色 

浮き寝鳥 人ごゑ離れ 易きかな

ちかぢかと 無垢の空あり 輪樏

立ちふさぐ 雪の襖へ 鬼やらひ

春立つや 結願ちかき 千の絵馬

流れのままに 水鳥の いとまかな

湖凍てて 魚棲む水の 碧からむ

吹雪く日の 渾身の紅 ななかまど 

蝦夷松の 闇うすうすと 鬼やらひ

この道の 果ては海かも 雪しまく

寒林の ほのめくほどの 夕茜