こんにちは、大井です。

 

本日1220日は、清泉・文化史学科の

卒業論文の提出締切日

でした。

 

毎年期限ギリギリまで作業を続ける学生が多く、ゼミの教員はこの時期に肝を冷やします。本日正午の時点でも、ゼミ生18名中3名が提出を済ませていない状況でした。

 

もともと、ゼミ内の仮提出日は1130日に設定していました。しかし、その時点で完成していた学生は1名だけです。残りの17名は、このときまだ執筆の道半ばで、ようやく12月に入ってから続々と論文が仕上がっていきました。就職活動を続けている学生もいたので仕方ないことではありますが、最後まで本当にひやひやしました。

 

とはいえ、この数か月間、どの学生も執筆作業に全力で取り組み本当によく頑張りました。

本当におつかれさまです!

 

 

今年度の卒論テーマ

 

私が担当する西洋近現代史のゼミで、今年提出された卒業論文の論題は以下のとおりです。

 

★香港の自由と民主 ―香港返還を中心に―

★英国王室の女性君主 ―イギリスの繁栄に歴代女王が与えた影響―

★ナチス・ドイツが展開したプロパガンダの影響 ―大戦間期から第二次世界大戦期の変化―

★ミュージカル『エリザベート』から見る皇妃エリザベート ―死に愛された彼女が現代の人々を魅了するその訳とは―

★マリー・アントワネットはなぜ処刑されたのか

★ニコライ2世とロシア革命 ―ロマノフ一家の処刑には正統性があったのか―

★アメリカ経済不況から伝播する経済の変化 ―世界恐慌、リーマンショック、COVID-19より―

★17世紀~20世紀のフランスにおけるモードの変遷

★ドイツと日本の戦後処理と歴史教育 ―犯した罪の認識からどのように責任を取り事実を伝えるか―

★近代におけるイギリスとインドの関係性

★オーストリア皇妃エリザベートの精神病院訪問

★19世紀前半のイギリスにおける茶貿易の変容 ―アヘンをめぐる中国との関係を踏まえて―

★現代に残る黒人差別の原点はどこにあるのか? ―奴隷貿易~南北戦争後の奴隷解放(1600 1800 年代)までの動きの中から―

★大東亜戦争における真珠湾攻撃 ―人種と金脈から解く真相―

★服飾文化の広がり ―マリー・アントワネットとヴィクトリア朝を中心に―

★世紀末ウィーンにおけるグスタフ・クリムト ―エゴン・シーレ、女性たちとの関係性をめぐる考察―

★ヴェルサイユ宮殿における絶対王政の視覚的表現

★死刑執行人シャルル・アンリ・サンソン ―死刑執行人と死刑廃止までの歩み―

 

王朝の歴史、政治史、経済史、文化史、人物史など、さまざまな領域のテーマが並んでいます。ファッション史は、私のゼミでは毎年定番のジャンルとなっており、本年は2名の学生が挑みました。プロパガンダ、差別、死刑制度をめぐる問題も、ここ数年取り上げる学生が多く、現代的な関心を含んだ歴史アプローチがなされています。また、西洋の美術や建築の歴史をテーマにした学生もおり、芸術史の枠を越えるスケールの大きな考察を展開していました。

 

なお、今年は西洋史とアジア史(日本史)を接合した意欲的な論文が目立ちました。来年4月から高等学校では「歴史総合」という新たな必修科目が導入されます。世界史と日本史を融合するこの新たな学びの時代を先取りしているかのようでした。

 

卒論指導を振り返って

 

昨年度の1年間、ゼミはすべてオンラインで実施されたため、卒論に向けた研究指導は残念ながら対面で十分にできませんでした。さらには、厳しい就活環境も追い打ちをかけることになります。多くのゼミ生は、先行きが不透明なコロナ禍の就職活動に労力と時間を割かれ、4年生になってからも研究に全力で打ち込むことができないようでした。

 

夏にゼミ合宿ができなかったことも痛手でした。その結果、卒論への本格的な着手が夏休み明けからになってしまい、出足は例年以上に遅れることになりました。

 

合宿といえば、飲み会などゼミ行事のすべてがこの2年間完全に絶たれてしまいました。ゼミ生たちと思い出作りがまったくできなかったことは本当に心残りです。3年次の最初に約束した「キルフェボンのタルト」も、ついに幻となってしまいました・・・・。

 

4年次の卒論指導(「研究法演習」)の内容は、

Zoomとメールによる個別研究指導、対面授業での全体レクチャー、個別面談指導、グループワークによる意見交換会、といったラインナップでした。

何せ今年は、例年よりも多い18名のゼミ生を抱えることになりました。そのため、一人一人にじっくり指導の時間を割くことができず、彼女たちには本当に申し訳なく思っています。

 

そうした指導教員の怠慢や時間的な制約を抱えながらも、ゼミ生たちは自分の力でテーマを練り、文献資料を探し、集めた文献を丹念に読み込み、そして論文を見事に書き上げてくれました。ほとんどの学生は2年次の入門演習から馴染みの学生たちですが、この3年間で本当にたくましくなったなあ、と少しじーんときています。大学生活の半分をパンデミックの災禍にさらされ、楽しいキャンパス生活を奪われ、心が折れることもあったと思います。しかし、それでも腐らず、最後まで頑張って卒論をやり抜いた彼女たちを私は誇りに思います。この粘り強いチャレンジは、きっと彼女たちの将来に何かかけがえのないものを残していると信じたいものです。

 

 

とはいえ、まだ2月に卒論の口述試験が残っており、ゼミ生全員の卒業が今の時点で確定したわけではありません。卒業に必要な単位を取りきるため未だ授業をたくさん履修している学生も数名います。年末年始はとりあえず一休みしてもらい、その後エンジンを再び点火して最後まで走り抜けてもらいたいと思います。

 

来年3月、卒業式の開催方式がどうなるか現段階ではまだはっきりしません。ただどのような形になるにせよ、18人全員の門出を笑顔で無事に見届けることができれば幸せです。

 

私が清泉に赴任した20184月。

あの春、清泉へ入学した学生たちがまもなく卒業します。

教員として迎えるこの一つの節目を、来春じっくりかみしめたいと思います。