こんにちは、大井です。

 

突然ですが、みなさんはプリンセスという言葉から何を連想しますか?

プリンセスの物語、みなさんはお好きでしょうか?

 

本日は1117日に担当した「プリンセス・スタディーズ」という授業のお話をさせていただきます。

 

プリセンス・スタディーズとは?

 

清泉の2年生以上の方々には聞きなれない科目名かと思います。

それもそのはず、この科目は今年度からスタートした共通教養の新設必修科目です。昨年まではありませんでした。

 

清泉女子大学では、今年度に入学した1年生から新カリキュラムが導入されました。この新課程では、全学科の1年生が後期に「初年次スタディーズ」という選択必修科目を履修することになります。その5つの選択コースの中に「プリンセス・スタディーズ」が用意されています(ほかには「戦国」「言葉」「AI」「ファッション」のスタディーズがあります)。

 

この「スタディーズ」科目では、半期全13回にわたりオムニバスの講義を聞いたり、学生同士でディスカッションをしたりします。担当教員は学科の垣根を越えて毎回変わります。そのため、多彩な話を聞くことができ、幅広い視点から一つのテーマを究めることができます。楽しいテーマを学問的に楽しく学ぶがコンセプトの入門型授業といえるでしょう。

 

ちなみに、「プリンセス・スタディーズ」の受講者は100名ちょっと。全コースの中で1番人気があったため、残念ながら希望者全員を受け入れることができなかったそうです。ディズニー・プリンセスの影響力は絶大なのかもしれませんね。


 

 

歴史のなかのプリンセス

 

シンデレラを扱った前回までの「文学編」に続き、今回からは新たに「歴史編」が始まりました。私はそのトップバッターを務めさせていただき、担当テーマは「ヨーロッパにおけるプリンセス」です。

 

私が今回独自に付けた授業タイトルは次のとおりです。

 

一度はなってみたい憧れのプリンセス

しかし・・・

プリンセスはつらいよ

~プリンセスの光と陰~

 

なんとも長い意味深な題名です・・・。

 

 

授業のねらいは、「光」「陰」の両面からプリンセスの実像を探るというものです。

それを明らかにするために、歴史上の3人のプリンセスを取り上げました。

 

フランス皇太子妃(王妃)マリー・アントワネット

オーストリア皇妃エリザベート

イギリス皇太子妃ダイアナ

 

つまり、18世紀フランス、19世紀オーストリア、20世紀イギリス、各時代・各国からプリンセスの実例をピックアップしました。

 

 

マリー・アントワネットとエリザベートに関しては、前期に「女性史」の授業ですでに扱っています。「女性史」を受講していた学生もいましたので、今回は話が重複しないよう論点や授業方法を少し工夫してみました(ミュージカルの話も封印しました!)。

 

授業の中身についてここで語りたいのですが・・・そうすると、来年度以降の新入生にとってネタバレとなってしまいますのでやめておきましょう。

要は、「夢と現実の狭間を行ったり来たりさせるような授業」をイメージしていただければと思います。

 

現実の暗部を見せてしまうという意味では、ディズニーファンの夢を壊し、プリンセスに対する憧れを打ち砕く、冷酷無比な授業といえるでしょう。

 

実在のプリンセスの輝かしい側面と綺麗できらびやかな情景を見せ、気分を舞い上がらせておいて一気に突き落とすわけですから、

まるで

 

タワー・オブ・テラー

 

のような授業です。

 

とはいえ、それが「歴史」なのですから仕方ありません。大学は「歴史」を学問として学ぶ場です。

 

 

ダイアナへの共感

 

というわけで、今回はロマンやファンタージのかけらもない授業です。もちろん批判を覚悟のうえではありました。見せなくていいものをなぜ見せる!という抗議も予想していました。

 

ところが、授業後に提出された学生のコメントを読むと、みなさん冷静に受け止めていたようで安心しました。さすが清泉の学生です。大人です。夢は夢、現実は現実、しっかり分けて見極める素養をお持ちです。コメントは冷静かつ感性豊かで、私が出した「問い」に対する回答も鋭い考察に満ちていました。

 

そして印象的だったのは、ダイアナに対する関心の高さでした。授業ではマリー・アントワネットとエリザベートをじっくりやりすぎてしまい、最後のダイアナに関する説明を一部割愛せざるを得ませんでした。

 

そもそもダイアナの物語は、「歴史」というよりは「現在」にほぼ近い話です。私としては、マリー・アントワネットとエリザベートに対する「添え物」程度としてしか考えていませんでした。しかも関係者たちの多くは存命中です(チャールズ皇太子、カミラ夫人、エリザベス女王など)。まだ明らかになっていない事実もあるため、史実の提供や解釈は慎重にすべきと思った次第です。

 

しかし完全な「歴史」になっていない最近の話だからこそ、逆に学生たちの心には響くものがあったのかもしれません。鮮やかな写真やリアルな映像も、他のプリンセスに比べ現実性や親近感を抱かせる効果を持ったようです。

 

そして何よりも、現代社会のしがらみや逆境のなかで生きる同じ一人の女性として、何か共感するものがあったのだと思います。

場所はイギリスと日本、立場はプリンセスと一般女性、置かれた状況は大きく異なります。しかし、葛藤や苦悩を抱えながら、一人の女性として必死に闘い生きるという点では同じではないのか?そうした想いが、無意識にダイアナへ感情移入する要因になったのかもしれません。

 

元イギリス皇太子妃ダイアナ、いずれは「女性史」の授業ラインナップに加えるべき人物だと思った次第です。

 

 

 

そうそう、ダイアナはオーストリア皇妃エリザベートと比較しみると、これまたいろいろな発見がありました。もちろん両者には相違点も多いですが、時代と国が違うのに共通点がたくさんあることは不思議ですね。

 

 

エリザベートとダイアナ。純真無垢な二人の少女は、ある日突然お妃に選ばれ、誰もがうらやむシンデレラ・ストーリーを体現しました。しかし、そこで待ち受けていた現実が突きつける試練・・・。心の準備が整わないまま皇室に嫁いだ彼女たちは、やがて絶望に打ちひしがれ、現実から逃避し、そして目の前の現実と闘います。

 

自分の運命と向き合う覚悟。

歴史上のプリンセスから私たちが学べることは多いはずです。

 
 
2023年1月に清泉女子大学の生涯学習講座「ラファエラ・アカデミア」で
「運命と闘ったクイーンたち」(全3回)

を担当させていただくことになりました。

1年かけてしっかり準備したいと思います!

 

 

おまけ

来年2022年は、ダイアナの没後25周年に当たります。

※日本と違い欧米では4半世紀(25年)という区切りを重んじる傾向があります。

それに先駆け、最近ダイアナに関する映画やミュージカルが続々と公開されています。欧米ではもちろん、日本でも映画や出版を通じてダイアナへの関心が高まる年になるかもしれませんね。