映画観賞……それは〈中略〉……めっちゃコスパの良いエンタメ……。
これは……〈中略〉……好きな映画について、いい加減な知識と思い出を元に‥‥‥いい加減な知識と思い出を元に!! ‥‥‥筆者の徒然なるままに書くコーナーである。
▼『映画を語れてと言われても』
第九十五回『空が飛べるだけで君は……“ロケッティア”』
タグ:第二次大戦 ナチスドイツ ギャング 飛行機 アクション ハリウッド 映画スター 俳優 演技 ハワード・ヒューズ 飛行船 ヒーロー スパイ 航空ショー
『ロケッティア』
1991年公開
監督:ジョー・ジョンストン
音楽:ジェームズ・ホーナー
出演:ビル・キャンベル ジェニファー・コネリー ティモシー・ダルトン アラン・アーキン テリー・オクィン他
あらすじ
1938年のアメリカ‥‥‥ハリウッド近郊。
若き航空機レースのパイロットのクリフ(演:ビル・キャベル)は、父親代わりの凄腕飛行機エンジニアのピーヴイー(演:アラン・アーキン)が、来たる航空機レース用に全財産を投じて製作した新機体のテスト飛行を行っていたところを、低空飛行中に地上で行われていたギャングとFBIのカーチェイスの流れ弾が命中したことで不時着し、飛行機はオシャカとなってしまった上に多額の借金を抱えることになってしまう。
FBIとギャングに憤るクリフであったが、弁償などされるはずもなく諦めるしかないクリフとピーヴィー。
仕方なくオンボロ飛行機での航空ピエロショーで借金返済を考えるクリフは、ピエロショー用飛行機の座席に隠された謎の機械を発見する。
それはFBIとカーチェイスを繰り広げていたギャングが、密かに格納庫に隠したブツであった。
リュックサックサイズの機械であるそれは、一種のロケットエンジンであり、人が背中で背負って使う為のベルトが備え付けらていた。
好奇心からクリフとピーヴイーは、近所にあった木製像にそのロケットを背負わせて実験を試みる。
しかしてそれは見事に空を飛び、どこかの誰かが発明したヒトが空を飛ぶための発明・ロケットパックであることが判明したが、致命的な欠陥も抱えていた。
クリフはピーヴィーにその欠点を解消してもらい、このロケットパックを使ったショーでの借金返済の可能性を考える。
一方、ハリウッドの銀幕スターにして、何故かギャングを雇い発明者である大富豪ハワード・ヒューズからそのロケットパックを盗ませた男、ネビル・シンクレア(演:ティモシー・ダルトン)は、ギャングが格納庫に隠したロケットパックを回収するため、再びギャングに命令を出しつつ、独自に活動を開始していた。
さらにその一方で、クリフのガールフレンドである女優の卵ジェニー(演:ジェニファー・コネリー)は、ガサツな上に飛行機の不時着を黙っていたクリフとデートで大喧嘩してしまう。
その翌日、端役で参加していたネビル・シンクレア主演映画の撮影時に、仲直りしにきたクリフによって撮影をぶち壊され、受けていた役をクビにされかけるジェニーであったが、クリフがロケットパックについてジェニーに話していたところをネビル・シンクレアに盗み聞きされ、ロケットパックを狙うネビルに、ロケットパックに繋がる女として食事へと誘われることとなる。
さらにその翌日、予定されていたピエロの航空ショーにクリフが遅刻したため、代役パイロットが操縦していたオンボロ飛行機が飛行中に故障し、それを見ていたクリフは、パイロット救出の為、意を決してロケットパックとピーヴィーが作った空中方向舵替わりのヘルメットを装備し、空へと飛び立つ。
人類初のロケットパックでの飛行で見事ピエロのパイロットを救出したクリフは、その一部始終を航空ショーの観客とマスコミに目撃され、謎のヒーロー『ロケッティア』として世間にデビューすることとなるのであった。
しかしその行いにより、ロケットパックを狙う魔の手は、確実にクリフとその恋人のジェニーへと迫っていた。
はたしてクリフとジェニーの運命は? 銀幕スターでありながらロケットパックを狙うネビル・シンクレアの正体とは!?
さて今回は1938年の第二次世界大戦前夜を舞台にしたとってもユニークな存在のヒーロー映画を語りたいと思います。
監督はジョー・ジョンストン。
元は『スターウォーズ』旧三部作で特殊効果マンとして活躍していた人で、『ミクロキッズ』デビューした後は、本作の他に『ジュマンジ』『遠い空の向こうに』『ジュラシックパークⅢ』『キャプテンアメリカ:ザ・ファーストアベンジャー』等を撮っています。
なんとなくどんな映画を撮る人なのか傾向が分かるラインナップ!
音楽は毎度おなじみ(故)ジェームズ・ホーナー!
本作でも『ロケッティア』のテーマ曲と言えばこれ! ってな感じの一度聞いたら忘れられない実に良い仕事をしております。
主人公の飛行機パイロットのクリフ役はビル・キャンベル。
なかなかのイケメン俳優ですが、本作以外での活躍を筆者は存じ上げません。
どうもTVドラマで主に活躍しているようです。
ヒロインの女優の卵ジェニーを演じているのはジェニファー・コネリー。
本コーナーでは『ダーク・シティ』等に出演している他、『トップガン:マーヴェリック』でもヒロインをつとめたデラ美人さんです。
本作でも売れない女優という若干説得力の無い役で、ロケッティアに勝るとも劣らない大活躍をしております。
悪役の映画スターながらもロケットパックを狙う謎の俳優ネビル・シンクレア役にはティモシー・ダルトン。
『007:リビングデイライツ』と『007:消されたライセンス』でMI6のエージェント007ことジェームズ・ボンドを演じたイケオジです。
本作では気品とプライドのゲスさを併せ持った悪役を実に楽しそうに演じております。
ちょっと『ルパン三世:カリオストロの城』の伯爵を連想します。
そして主人公のクリフの相棒のピーヴィー役にアラン・アーキン。
1960年代から数え切れない映画に出演してきた名優中の名優です。
代表的な活躍でいうと『リトル・ミス・サンシャイン』や『アルゴ』『ジーサンズ はじめての強盗』での出演が印象深いおじさんです。
今回はほぼほぼ『バックトゥザフューチャー』のドク見たいな役どころで、主人公をエンジニリングアの面からサポートしております。
そんなスタッフキャストでお送りする本作は、数ある実写ヒーロー映画の中でも類を見ない、かなりユニークな一本です。
公開されたのは1991年、幼き筆者が初めて一人で映画館に行って見た映画の一つで、筆者をこんな映画オタクに引きずり込んだ切っ掛けの一本でもあります。
当時はまだ実写ヒーロー映画が、2020年代の昨今のようにメジャーな存在ではなく、ティム・バートン監督の『バットマン』くらいしか劇場公開されるような作品はありませんでした。
当時の映像技術では、マンガのヒーローを実写するのが難しかったからという理由が大きかったとは思いますが、やはり映画業界全全体が、まさかヒーローものを大真面目に実写映画化ができると信じられていなかったからな気がします。
そんな中で公開された一本のヒーロー映画であるこれは、正直なところ大ヒットとは言えず、知る人の少ないマイナー作品と言わざるを得ません。
ですが、数々の挑戦と、類まれなセンスによって実現した本作は、今見ても充分面白い‥‥‥‥‥‥そしてどこか微笑ましい作品なのです。
まず舞台となる年代と場所設定がシブい!
時代は1938年! 他の映画で例えるなら『インディ・ジョーンズ』が活躍した時代です。
つまり時代劇というほど昔ではなく、現代劇という程今ではない、絶妙な時代‥‥‥まだ辛うじて平和な時代のアメリカが舞台なのです。
そして場所はアメリカはカリフォルニア州ハリウッドとその近郊。
映画文化が華開きつつも、後の第二次大戦の足音が近づいて来ている時代と場所が選ばれたのです。
そしてそんな世界で活躍する我らがヒーローであるロケッティアは、偶然手に入ったロケットパックで空を飛ぶことができるようになった飛行機のパイロットです。
言わば飛べることがスーパーパワーなヒーローです。
飛ぶだけです! 生身で!
凄い筋力や超回復能力や、糸を出したり金属の爪を出したり、超天才の大金持ちというわけではありません。
2020年代のヒーローで例えるなら、キャプテンアメリカの相棒のファルコンが近い気もしますが、2010年代後半の最新テクノロジーの翼を背負うことで空を自由に飛ぶファルコンに比して、ロケッティア背負ったロケットから燃料をぶっ放して飛ぶという、乱暴というか豪快極まる飛行手段です。
ロケッティアはそのただ空を飛べる‥‥‥それだけの能力を駆使して、待ち受けるトラブルや巨悪に立ち向かうのです。
まずそれで一本映画を撮ろう! という試み心意気が凄い!
そして本作の送りて達は、見事それを成し遂げたのです。
思えば本作の設定年代が第二次大戦前夜なのは、人がロケットを背負って飛ぶことのレアリティの高さと実現性から戦略的に選ばれたような気がします。
一応現在でしたら人が背負って飛ぶ飛行装置が存在するので、ロケッティアが現れてもそこまで珍しくもなければ活躍もできず、かといって1930年代よりも前にすると、ロケットパックが発明できる説得力に欠ける気がしますからね。
ちなみに本作でロケットパックを発明したことになっているのは、ハワード・ヒューズという実在した飛行機大好きの大富豪。
『アイアンマン』のトニースタークのモデルにもなった人と言われており、彼の伝記はレオナル・ドディカプリオ主演の『アビエイター』というタイトルで映画にもなっています。
そして本作の舞台設定は、何よりも、ロケットパックを狙う巨悪との戦い‥‥‥というシチュエーションが作れます。
インディ・ジョーンズでもおなじみの、いつものあの巨悪が、ロケットパックを狙って襲い掛かってくるのです。
本作の送りての人たちは、こういった様々なメリットから、とても戦略的に本作の時代と舞台の設定を選んだのかもしれません……。
でも一番の理由は、ロケッティアのこの何とも言えないレトロフューチャーなビジュアルがまず浮かんでしまって、この姿を大暴れさせたくってこの舞台設定をひねり出したんだと思いますけどね!!
本作の素晴らしさはそういった、ただロケット背負って飛ぶだけのヒーロー映画を作ろうとして、それが活躍するシチュエーションを考えたことだけではありません。
それはもちろん、CGのシの字も無い1991年公開時の映像技術の限りを結集して映像化した、ロケッティアの大空を舞う活躍シーンも素晴らしいのです。
何しろ使える主な特撮技術は、模型特撮と合成です。
それで補えない映像派どうやって撮ったのでしょうか?
その答えは‥‥‥頑張って撮った! であると思われます。
初期の007映画とかでもそうですが、スタントマンの命がけの撮影でなんとかしたと思われます。
また、もちろん集められた曲者ぞろいの俳優たちの演技もすばらしいいのですが、本作の最大の魅力、そういった俳優の熱演や、特撮映像や、巧みな舞台設定を利用した脚本もろもろを全てひっくるめた‥‥‥〈のどかな雰囲気〉‥‥‥だと筆者は思うのです。
その〈のどかな雰囲気〉は、本作の物語がはじまった瞬間、ジェームズ・ホーナーの奏でるとても壮大だけれども、のどかなメインテーマによっていきなり醸し出され、それはエンドロールまで維持され続け、本作は『あ~のどかだったなぁ~‥‥‥』としみじみ思える感じで終わるのです。
ヒーロー映画で『のどかのどか』言われても困るでしょうが、筆者のボキャブラリーではそうとしか表現できないのです。
いついかなる時も、絶体絶命のピンチでも、決して『のどかさ』を忘れない映像演出シナリオ音楽演技が、それこそが本作最大の魅力なのだと思います。
この『のどかさ』を実現できたのは、監督のジョー・ジョンストンの類まれな手腕によるものだと思います。
それは監督紹介で前述した彼の監督作品を見れば、多少はお分かり頂けるとは思うのですが、具体的にどうやって『のどかさ』を実現してるのかと問われると、それはやはり複合的過ぎて、ふわっとしか言えません。
しかしその『のどかさ』が本作を唯一無二の作品にしているのです。
その彼の才能は、後にMCUで『キャプテンアメリカ:ザ・ファーストアベンジャー』の監督に選ばれる程。
そして同作でもやっぱりどこか『のどかさ』を醸し出していことからも、彼の筋金入りの作風で魅力なのかもしれませんね。
さて、ここでいつものトリビア。
本作はいくらでも続編が作れそうな‥‥‥というか、これからロケッティアの本格的なヒーロー活動がはじまるそ! というところで幕を閉じ、結局今にいたるまで続編は作られなかったわけですが‥‥‥‥‥‥なぜか女児向けフルCGTVアニメとして2019年ちょこっとだけ復活してました。
‥‥‥‥‥‥なんでぇ??
‥‥‥てなわけで『ロケッティア』もし未見でしたらオススメですぜ!