本日は「10世紀」という時代を考えてみたいと思います。
私は授業で、10世紀という時代は時代の大きな転換期になるので、注意することが大切である、と話をします。
日本史の考え方29「なぜ古代の農民たちは逃げるのか」で説明しましたが、古代に生きた農民たちは、最低限度の生活保障として班給された口分田と引き換えに、国家への重税の納入が義務付けられていました😅
この重い税負担を逃れるため、農民たちはさまざま方法で国家に抵抗するのです。
高等学校で使用する日本史の教科書を参考にすると、浮浪・逃亡・私度僧(しどうそう:当時の僧は租税免除)・貴族の従者・偽籍、などさまざまな方法で税負担を逃れようとしています😲
特に「偽籍」は国家にとって大問題でした。
戸籍は、国家が日本国民を正確に把握するために作成するものです。
戸籍は6年に1度作成されるのですが、この戸籍に基づいて口分田を班給します。
そして調・庸といった税を農民に賦課するための台帳である計帳(けいちょう)が毎年作成されることになります。
「偽籍」という行為は、兵役・労役・租税を負担する成年男子の数を意図的に少なくし、税負担の軽い女性の数を意図的に多くすることで、重税から逃れようとするものです。
日本史の教科書には、902(延喜2)年の阿波国(現在の徳島県)の戸籍の状況が記載されています。
「5戸435人の内訳は、男59人・女376人」
調・庸を負担するはずの男性の数が異常に少なく、税負担の軽い女性の数が異常に多いのです😲
班給される口分田の面積は、女性は男性の3分の2とされていました。
女性の数を増やすと班給される口分田の面積が、男性に比べると少なくなってはしまうのですが、税負担が大幅に軽減されます😊
偽籍とは、その名の通り偽った戸籍ですから、男性は戸籍に登録された人数以上に存在しています。
ですから、口分田を耕作するなどの重労働を担当したのは、圧倒的に男性だったはずです。
女性は租税としての布を織ったり、食事や子育てなどを担当していたと思われます。
しかし❢❢
この状況を国家の側から見たときに、どのような弊害があったのでしょうか❓
答えは容易に出てくると思います。
租税が国家に集まってこない❢
歳入が少なくなれば、国家としての政策が実行できなくなります😨
つまり、「戸籍に記載された成年男性を中心に課税するシステムが機能不全」に陥ったわけです。
事実、902(延喜2)年を最後に、班田を命じる史料は見られなくなってしまいます。
班田がなされなければ、国家が租税を徴収する正当性がなくなります。
902(延喜)年は、10世紀初めです。
10世紀の初めは、律令体制のいきづまりがはっきりしてきた時代でした。
律令体制とは、律令と呼ばれた法律により定められた政治体制のことです。
この政治体制の根幹の1つが、「人民は公民として戸籍・計帳に登録され、全国の田を公民に耕作させるための班田収授法、公民に納税させるための賦役(ぶやく:人に課税すること)制を施行する」というものでした。
しかし、10世紀初期の段階において、戸籍・計帳が作られなくなり、班田収授の実施が困難になります。
そうなれば当然ですが、租税を徴収することで、国家や諸国(現在の各県)の財政を維持することはできなくなります。
国家や諸国は財政難で滅びてしまうことになります😨
それでは、国家や諸国は滅びたのでしょうか❓❓
もちろんそんなことにはなりませんでした。
国家は新たな徴税方法を考え出したのです☻❢
皆さんが国家の側だとしたら、どのような方法で確実に歳入を確保しますか❓
是非、考えてみて下さい。