前回の続きになります。

 

古代の農民の租税👛には、どのようなものがあるのか、ということでした。

 

 

前回お話しました「(そ)」は、土地税です。

 

つまり、土地に対してかけられる税になります。

 

 

これに対して、課役(かやく)と呼ばれる租税が存在します。

 

この課役を徴収するために、毎年計帳(けいちょう)と呼ばれる課税台帳が作成されます。

 

各戸主に、家族の氏名・年齢・性別・身体的特徴などを申告させたものを、国司が国ごとにまとめるのです。

 

 

 

」は、調(ちょう)と副物(そわつもの)のことです。

 

調は、各地方で生産される絹・絁(あしぎぬ:粗く織った絹布)・糸(絹糸)・綿・布(麻布)などの繊維製品を徴収するのが原則でした。

 

しかし、各地方の特産品である鉄・鍬・塩・水産物を徴収する場合もありました。

 

納められた繊維製品は、中央財政の主要財源として、役人の給料や中央官庁運営費に当てられました。

 

 

副物は、調に副(そ)えて徴収された物品のことです。

 

紫・漆・塩・紙・樽など、様々な染料・工芸品・調味料などを納めさせました。

 

 

 

」は、(よう)と雑徭(ぞうよう)のことです。

 

は、都での歳役(さいえき:肉体労働のこと)10日間に代えて、布(麻布)2丈6尺(約8㍍)を納める税です。

 

収められた布は、都の造営などで労働に従事した人々(地方の農民を農閑期に都に派遣)に対して支払われる費用に当てられました。

 

 

雑徭は、年間60日を限度として、地方で土木工事などの労働に従事する税のことです。

 

 

これら課役は、人頭税といって、人に対してかけられる税でした。

 

 

 

ここで少し考えたいことがあります。

 

 

調は、都で消費されるものです。

 

当然ですが、地方で徴収された調を都まで持っていかなければなりません。

 

誰が都に運ぶのでしょうか❓❓

 

 

 

答えは、農民です。

 

調は納税負担者(=農民)が都まで運ばなければなりませんでした。

 

 

これを運脚(うんきゃく)といいます。

 

食料なども自分たちで用意しなければなりませんでした。

 

 

高等学校で使用する図説などには、例えば関東から都(奈良時代は平城京・平安時代は平安京)まで、上りで約30日。下りで約15日。

 

下りの日数が上りの半分なのは、荷物を降ろして軽くなるからです。

 

 

しかし、現代のようにスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどがない時代。

 

持参した食料が尽きて、帰路には餓死する者が多くいた、とされています。

 

過酷すぎます…😢

 

 

 

」・「課役」以外にも、まだ税の負担があります。

 

 

それは、「兵役」です。

 

兵士として徴発されると、諸国(現代では各県に該当する)に設置されている軍団という場所で、軍事訓練を受けることになります。

 

兵士は、武器や食料を自分で用意しなければなりませんでした。

 

大変な負担となったのです😢

 

 

兵士の中には、衛士(えじ)や防人(さきもり)になる者がいました。

 

 

衛士は、天皇の住まいである皇居を守ることを任務としています。

 

期限は原則1年間の任務とされました。

 

 

防人は、北九州の防備にあたることを任務としています。

 

期限は原則3年間の任務とされました。

 

10日間に1日の休暇があったことに触れると、生徒も「へぇ~」となります😊

 

 

衛士防人の任に当たっている時は、課役調雑徭)が免除になっていました。

 

 

 

これらの他にもまだ、難関大学の入試で扱われる「仕丁(しちょう)」と呼ばれる負担がありました。

 

50戸に2人の割合で、3年間中央官庁の労働に従事しました。

 

費用は50戸で負担することになっており、2人のうち1人が労働、もう1人が労働者の世話を担当する仕組みでした。

 

 

 

ここまで農民の税負担の状況を見てくると、あることに気づきませんか

 

 

つまり

 

 

最低限度の生活を保障してくれている口分田の分配に対して、税負担が異常に重いのです😲

 

 

 

授業ではここで、高校生に問いかけを行います。

 

 

「明らかに、国家から与えられる口分田に対して、支払うものが多い状況が分かると思います。皆さんなら、ちゃんと租税を納めますか❓」と。

 

 

「払わないというより払えません❢❢当時の農民が重すぎる税納入を拒否して逃げた理由がよくわかります❢」と生徒は言います。

 

 

確かに生徒の言う通りかも知れません😅

 

 

 

「では、皆さんであれば、どこへ逃げるのでしょうか❓」

 

 

「海朝鮮半島無人島❢」などなど…。

 

 

色んな答えが出てくるのですが、どれも現実的なものではありません。

 

 

海を使うにしても、舟が必要になります。

 

すぐに逃げたいのに、どうやって作るのでしょうか…❓❓

 

 

原則、逃げだしたら、国家が捕まえにやってくることになっています。

 

捕まったら、本籍地に連れ戻されてしまうのです。

 

 

もっと現実的な視点で考えることが大切です。

 

 

 

さぁ、皆さんならどこに逃げて行きますか❓

 

 

 

この続きは、次回にしたいと思います。