『NUTRIENT POWER―HEAL YOUR BIOCHEMISTRY AND HEAL YOUR BRAIN』(Skyhorse Publishing, 2014)

著者:William J. Walsh

chapter7 autism(自閉症)

99〜100ページ

※日本語訳は引用者が行いました
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この本は自閉スペクトラム症とADHDの原因最新の治療方法について書かれています。予防方法についてはこれまでに掲載した『発達障害の原因と発症メカニズム』(黒田洋一郎)の第8章と第9章(12/29〜1/15に掲載)を、日本で受けられる治療については『発達障害を克服するデトックス栄養療法』(大森隆史)、心身養生のコツ』(神田橋條治)p.243〜246 (2023/10/11に掲載) をお読みください。
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 私は、(自閉症の発症の際に)非常に急速な退行(が起こったこと)を報告した何百人もの親に会った。発語の喪失、奇妙な反復運動、奇妙な視線、特定の食物に対する突然の拒絶反応、性格の極端な変化など、退行という現象は全体的に顕著である。重大な事が脳内で、そしておそらく全身で起こっていることは明らかである。
 自閉症以外で、比較的正常な期間の後に認知機能が急速に悪化する疾患はウィルソン病と統合失調症である。(それらの疾患と自閉症の)重要な違いは、自閉症は脳の発達において重要な初期の段階で発症するということある。ウィルソン病の発症年齢の中央値は17歳である。この障害では、肝臓や他の臓器から銅を除去する能力が損なわれることで、身体的機能と精神的機能が極端に悪化する。
 ウィルソン病、統合失調症、自閉症はすべて酸化過剰になり、防御タンパク質であるメタロチオネイン(MT)とグルタチオン(GSH)の極端な不足が起こるという点で類似している。
 ウィルソン病では、酸化ストレスの悪化は、MTとGSHの抗酸化機能が枯渇するまで進行する可能性があり、その結果、(a)肝臓から銅を移動する胆汁の働きが突然損なわれ、そして(b)症状が劇的に悪化する。
 統合失調症の発症は通常、16歳以降に発生する。この時期には、重度の感情的または身体的ストレスが酸化過剰を引き起こし、精神的な衰弱を引き起こす可能性がある。
 これらの類似性は、ウィルソン病と統合失調症における退行の研究によって自閉症スペクトラム障害の発症への貴重な手がかりが手に入る可能性があることを示唆している。
 自閉症の退行があまりにも突然に起こることは多くの疑問が生じるが、さらに不可解なのは自閉症の症状が永続的であることである。初期に生化学的治療(biochemical therapy)※ を行わなかった場合、自閉症はしばしば、一生涯の障害になる
私は自閉症から回復した何百ものケースを目撃した。そのほとんどすべては4歳以前に積極的な介入を受けていた。6歳以降であっても、酸化ストレス、毒性過剰、食物過敏症、酵母菌の異常増殖、金属代謝のアンバランス、および免疫機能の弱さを効果的に克服する治療法は、(それらの症状に)大幅な改善をもたらすことができるが、認知、社会性、言語障害は通常、本質的には自閉症の状態にある(低い)レベルにとどまる。
これは、(a)自閉症の中心的な問題は、初期の脳の発達がうまくいかなかったことであり、(b)脳の発達におけるこの重要な段階が完了する前に治療を開始しない限り、完全に回復する可能性は非常に低いことを強く示唆している。
 自閉症の研究者と臨床医は多くの点で意見が分かれているが、早期介入が不可欠であることについては満場一致で同意している。


 生化学的治療(biochemical)については心身養生のコツ』(神田橋條治)p.243〜246(2023年10月11日のブログに掲載)、2022年10月16日のブログ『発達障害に栄養療法がどのように効くのか』をお読みください。