『発達障害の原因と発症メカニズム——脳神経科学からみた予防、治療・療育の可能性』(河出書房新社,2014)
著者:黒田洋一郎,木村-黒田純子

第3章 日米欧における発達障害の増加
        ——疫学調査の困難さと総合的判断
93〜94頁

【第3章(16)】
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※この本には発達障害の発症のメカニズム予防方法が書かれています。実践的な治療法を知りたい方は『発達障害を克服するデトックス栄養療法』(大森隆史)、心身養生のコツ』(神田橋條治)p.243-246 、療育の方法を知りたい方は『もっと笑顔が見たいから』(岩永竜一郎)も併せてお読みください。
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 日本の現状の厳しさについては、最近(二〇一一年)の隣国韓国におけるすべての小学生を対象としたキムらの質の高い疫学調査の結果が参考になる(図3-2B)。
土屋賢治ものべているように、二・六%(一万人当たり二六四人)という驚くべき有病率の高さは、自閉症児を隠したがる韓国では研究参加辞退者も多いので、過小評価の可能性すらある。日本での神尾陽子の調査でも(四四頁参照)通常学級には約二・六四%もの自閉症児が含まれていた。
 文部科学省の調査では、自閉症児は日本の通常学級では約一%とされているが、いずれにしろこれらの自閉症児や発達障害児がどのように学校環境に対応しているのかが憂慮される。
 発達障害の問題は、まず当事者である子どもたちの健康・教育問題ではあるが、ただでさえ少子化の進む日本社会の将来に、大きな影響を及ぼす社会問題になってきたように思う。
 一〇年ほど前の河村らの調査の「広汎性発達障害:全児童の約一・八%」という数字は、最近の神尾らの「特別支援学級を除いた通常学級だけでも、自閉症 : 約二・六四%」の数字から見て妥当であり、驚くべき高率である。もはや発達障害の増加の有無の議論よりも、「なぜ、それほど増加したのか原因を探る」ことが重要な時代になったと考えられる。
 この問題に関して第8章、図8-1(二四四頁)に示した、独立に調査・報告された「広汎性発達障害の有病率」と「農薬の単位面積当りの使用量」(OECD二〇〇八年)が共に、世界一位:韓国、世界二位:日本、世界三位:英国、世界四位:米国であることは、学生時代、当時の「未来学」に興味を持ち第一回国際未来学会に参加講演したことがある私には、日本社会の未来を考えると「これは単なる偶然の一致にすぎない」と、簡単に見過ごすわけにはいかない。