『発達障害の原因と発症メカニズム——脳神経科学からみた予防、治療・療育の可能性』(河出書房新社,2014)
著者:黒田洋一郎,木村-黒田純子

【目次】
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※この本には発達障害の発症のメカニズムと予防方法が書かれています。実践的な治療法を知りたい方は『発達障害を克服するデトックス栄養療法』(大森隆史)、『栄養素のチカラ』(William J. Walsh)、『心身養生のコツ』(神田橋條治)p.243-246 、療育の方法を知りたい方は『自閉症スペクトラムの子どもの感覚・運動の問題への対処法』(岩永竜一郎)も併せてお読みください。
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目次●発達障害の原因と発症メカニズム
    ——脳神経科学からみた予防、治療・療育の可能性

  はじめに——米国小児科学会や欧州食品安全機関の声明、三つの伝えたいこと 1

  第1章 「遺伝と環境の相互作用」からくる脳の個人差の実態 17
         ——脳の構造と機能は一人一人みな違う
    1. 脳の構造と機能の概説:神経回路、神経細胞、シナプスの実像と階層性 2. 遺伝と環境が相互作用した遺伝子発現による脳の機能発達 3. シナプスの可塑性:記憶・学習など高次機能獲得、維持のメカニズム

  第2章 症状の多様性と診断のむずかしさ 39
         ——個性との連続と診断基準の問題点
    1. 自閉症症状のスペクトラム的多様性と分別の困難さ 2. 日本での教育現場での実態 3. 異なった発達障害の併存と他の症状・疾患との合併 4. 診断の困難さ : 発症を証明・予測する生物学的指標がない 5. 診断の分類と症状だけの診断基準による診断の困難さ 6. 二〇一三年のDSM-5への診断基準の改訂 7. 発達障害・診断基準の問題点

  第3章 日米欧における発達障害の増加 68
         ——疫学調査の困難さと総合的判断
    1. 自閉症と診断される子どもの数の増加 2.「増加は本当か」という “論争” 3. 「増えていない」という主張の二つの背景や事情 4. 総合的判断による発症の増加 5. 日本での発達障害の増加と対策
   ●【コラム】3-1有病率と発生率 3-2 疫学調査の重要さ、困難さと限界 3-3 予防接種液中の水銀化合物と自閉症

  第4章 原因は遺伝要因より環境要因が強い 95
         ——自閉症原因研究の流れとDOHaD
    1. 病気や障害の原因研究の歴史 2. 自閉症原因研究の流れ 3. 脳の発達に影響する遺伝要因と環境要因 4. 自閉症の原因:遺伝要因の過大評価 5. 医学研究の環境要因への流れ ——「生活習慣病」から「DOHaD」の概念へ
   ●【コラム】4-1エピジェネティックスと「環境病」 4-2一卵性双生児法の原理的欠陥

  第5章 発症メカニズムは特定の神経回路のシナプス形成・維持の異常」 124
         ——発症しやすさを決める遺伝子背景と引き金を引く環境要因
    1. 高次機能の獲得とシナプスの可塑性 2. 数百以上の自閉症/ADHD関連遺伝子群からなる遺伝子背景 3. 自閉症関連遺伝子リストからも発症メカニズムがシナプス形成・維持にあると推察できる 4. 発症メカニズムが「シナプス形成・維持の異常」である証拠 5. 自閉症モデル動物を使った研究による実証の可能性 6. 発症の引き金を引く環境因子 7. 「シナプス症」としての自閉症と統合失調症、うつ病などの精神神経疾患 ——関連遺伝子とシナプス異常の共通性
 ●【コラム】5-1 異常に良い記憶力をもった人間の記録

  第6章 子どもの脳のどこで発達の異常がおこるか 169
         ——脳の「共発達」と化学物質へのシナプスの脆弱性
    1. 脳のどの部分に障害があるのか 2. 高次機能の神経回路シナプスの脆弱性:長い軸索の先端のシナプスが障害されやすい 3. 子どもの脳の発達メカニズムと大きな個人差、発達障害との関係 4. 発達する神経回路同士の相互作用による「共発達」 5. なぜ発達“障害”児の能力が優れていることがあるのか

  第7章 発達障害の毒性学と発症の分子メ力二ズム 200
         ——遺伝的なシナプスの脆弱性と発達神経毒性化学物質の種類と感受性期、曝露濃度
    1. 自閉症など特定の発達障害の原因と判明している化学物質と一般の発達神経毒性化学物質 2. 個々の化学物質の発達神経毒性とその分子メカニズム 3. 発達神経毒性化学物質への感受性期と発達障害の発症 4. 発達障害の毒性学——特異的なシナプス結合のみが障害される脆弱性の遺伝子背景と毒性物質の濃度の組み合わせによる発症 5. ヒト脳の構造と機能の発達は、「遺伝と環境の相互作用」による——DOHaD型の「シナプス症」
   ●【コラム】7-1放射線には閾値はなく、確率的にDNAが損傷され、多様な健康被害が生じる

  第8章 発達障害増加の原因としての、PCB、農薬など環境化学物質汚染の危険性 241
    1. 発達障害の研究動向と農薬 2. 日本人はPCBや農薬など環境化学物質にどれだけ曝露しているか 3. 有機リン系などさまざまな農薬の危険性 4. ネオニコチノイド系農薬によるミツバチの大量死と発達障害への危険性

  第9章 発達障害の予防はできる 265
         ——環境要因による増加部分は、原理的に予防可能
    1. 環境要因が原因ならば、環境を変えれば予防できる 2. 毒性をもつ化学物質の摂取を避けることによる予防 3. 個人・家族レベルの現在の予防法  4. 社会として病気や障害の原因である毒性化学物質を予知し規制することの重要性 5. 放射性物質(ストロンチウム - 90など)の内部被曝による、自閉症など多くの疾患・障害の発症の可能性とその予防
   ●【コラム】9-1母親は流産や死産で解毒・排出しにくい毒物を排出している 9-2アルツハイマー病の老人斑は毒物が封じ込められたもの 9-3ローマ帝国の滅亡の鉛中毒説

  第10章 治療・療育の可能性と早期発見 296
         ——子どもの脳の著しい可塑性
    1. 治療・療育の可能性と「発達のリハビリテーション」 2. 脳とシナプスの可塑性と「感受性期」 3. 治療・療育のやり方の開発 4. 薬物療法の可能性と基本的問題点 5. 早期発見の必要性 6. 早期発見、早期治療のやり方
   ●【コラム】10-1 機能獲得の「感受性期」の始まりのメカニズム 10-2 アルツハイマー病対症治療薬の開発史

  【資料】 CREST研究の成果/研究終了報告書と解説 335
         ——分子 (遺伝子) レベル、細胞 (シナプス)レベル、個体(行動) レベルの実験的証拠
    Ⅰ 全体のまとめ(全文)  【解説】
    Ⅱ   新しい実験系の開発と研究成果の概略
     1. 遺伝子(分子)レベルの研究——遺伝子発現を指標にした新しいトキシコジェノミック実験系の開発と実験結果
     2. 細胞 (シナプス・神経回路)レベルの研究——培養神経細胞を用いた新しい実験系の開発と実験結果(黒田グループ)
     3. 個体 (行動)レベルの研究——化学物質の母親曝露によるラット、サルなどの子どもの行動への影響を観察する新しい実験系の開発とPCB、ダイオキシンなどの実験結果(吉川グループ)
     4. 海馬でのLTP、LTDなど記憶・学習の分子メカニズム(藤井グループ)

  あとがき——モーズレイ病院/ロンドン大学精神医学研究所の自閉症研究とマッキルウェイン先生   黒田洋一郎 367

  あとがき——海の生き物とレイチェル・カーソンから学んだこと   木村 - 黒田純子 379