一霊四魂 | 歴史エッセイ集「今昔玉手箱」

歴史エッセイ集「今昔玉手箱」

本格的歴史エンターテイメント・エッセイ集。深くて渋い歴史的エピソード満載!! 意外性のショットガン!!

「魂魄(こんぱく)この世にとどまりて 恨み晴らさで
おくべきやぁ」とは古典的怪談の名せりふ。で、この
魂魄とは、2つの要素から成り立っている。魄は
肉体の内側にあるエネルギー体で、ヨーガではチャクラと
ナディから成る微細身。俗に幽体離脱の幽体などと呼ぶ。

魂は肉体や幽体の最深部に潜む神の分け御霊で。神道
では直霊(なおひ)と言う。直霊は4つの性質から成る。
和合・協調を司る和御魂(にぎみたま)、英知を司る
奇御霊(くしみたま)、愛情を司る幸御霊(さきみたま)、
勇気や忍耐力を司る荒御霊(あらみたま)である。

伊勢神宮内宮に祀られているのは、天照大神の和御霊で
ある。天照大神の荒御霊は、縄文の女神でもある瀬織津姫
として、別に祀られている。この一霊四魂は全ての人間に
等しく存在するばかりでなく、動植物にも宿っている。
これほど優れた宇宙観・人間観・自然観を持つ宗教は、
世界的に見ても稀なことなのだ。

四魂とは、人間存在を成り立たせている古典的表現で、
ユング心理学では一霊をセルフ(自己)で表現し、心理的
機能を「直観・感覚・思考・感情」とした。そして最も発達
した機能ごとに、直観タイプ、感覚タイプなどと分類した。
これを優性機能という。

優性機能を二つの補助機能がフォローする。これが意識出来る
3機能である。しかし4番目の機能は、無意識下に沈殿して
いて、未発達のまま抑圧されている。これを劣性機能という。
逆に言えば、この劣性機能を意識して顕現出来れば「全体」
となるのだ。

キリスト教は父と子と聖霊の三位一体。3は意識の聖数。
つまり4番目の劣性機能は聖母マリア。彼女はオリエント世界
で広く信仰されている地母神であり、大地・女・蛇に象徴
される悪魔的存在なのだ。これが欧米世界の人間観や自然観の
無意識に潜んでいる。

この構造は神道にも潜んでいるかもしれない。縄文の昔から
信仰されてきた、天照大神の荒御霊・瀬織津姫である。明治以降
つい最近まで、日本の歴史教育では縄文時代を狩猟採集の非文明的
原始社会と見下していたからだ。日本文化の基調に豊かな精神文化
を持った縄文時代があることの意味は大きい。